ソニーは5月14日、2014年3月期通期の連結業績を発表した。「PlayStation 4」やスマートフォンの販売増により増収となったものの、PC事業に関連する損失の拡大などにより大幅な減益となった。
6月に代表執行役 EVP CFOに就任する吉田憲一郎氏は、最初に「2013年度の最終損益が3回の下方修正を経て約1300億円の赤字になったこと、そして今期2014年度についても500億円の最終赤字を見込んでいること、また2012年度に発表した連結営業利益率5%の2014年度における目標数値が達成できない見通しであることを申し訳なく思っている」と話し、会見をスタートした。
2014年3月期通期(2013年4月~2014年3月)の連結業績は、売上高で前年比14.3%増の7兆7673億円となったものの、営業利益は同88.3%減の265億円、税引前純利益は同89.4%減の257億円、当期純損失は1284億円の赤字となり、大幅な減益となった。
主な要因は、PC事業の損失が2013年3月期の386億円から917億円に拡大したこと、加えて電池事業やディスク製造事業においても減損を計上したことだ。
エレクトロニクス事業では、イメージング・プロダクツ&ソリューション(IP&S)分野で黒字化したものの、それ以外のセグメントはすべて赤字となり、5セグメントの営業損失は合計で952億円となった。
吉田氏は「現在のソニーの課題が集約されている」とコメントし、2004~2013年度の10年間にわたるソニーのエレクトロニクス事業の売上・営業利益推移を示したスライドを掲出。「エレクトロニクス事業がピークだった2007年度と2013年度を比較すると、2007年度の売上高は7兆2000億円で、ゲームの売上を除くと5兆9000億円、2013年度は売上高は5兆4000億円で、スマートフォンやゲームの売上を除くと、残りは3兆2000億円となる。この数字からAV、PC、デバイスなどエレクトロニクスの売上がほぼ半減していることがわかる」と説明した。
続けて「構造赤字の要因は、当社の事業が変化する中で、事業を変えていくこと、コスト構造を変えていくことの取り組みが十分ではなかった、あるいは遅れたことであると認識している」とし、AV機器の販売会社のコスト削減や、本社における固定費削減に向けて動き出していると話した。
また、7月に分社化を予定しているテレビ事業に関しては、2014年3月期の売上高が7543億円で、営業損失257億円の赤字となったことを発表。「赤字幅は2013年3月期の696億円から大幅に削減したものの、公約だった黒字化は達成できなかった。過去10年間のテレビ事業の赤字累積額は7900億円となり、この数字は大変重い。しかし足元の状況も含めて今回の黒字化は可能と考えている」(吉田氏)とした。
一方、映画、音楽を含むエンターテインメント、金融については、いずれも黒字となった。映画・音楽分野で円安の好影響が出たことに加え、前年度に「007スカイフォール」「アメイジング・スパイダーマン」などのヒット作に恵まれたこと、音楽分野でデジタル配信売上の増加があったことなどが要因だという。
ソニーでは、2015年3月期通期の連結業績を、売上高7兆8000億円、営業利益1400億円、当期純損失500億円と見込む。「期初の業績予想が赤字なのは2010年3月期のリーマンショック直後以来。この時は世の中の環境が落ち込んでいたが今回は違う。真摯に反省して将来につなげていきたい」とコメントした。
会見で今後の成長戦略について問われると「CFOとして重視しているのは施策の順番。厳しい状況の中で物事を進めるには順序が大事。コスト構造の最適化が第一、第ニがコア事業に集中すること、第三が新規事業へのチャレンジだと思う」と順番の重要さを強調した。ソニーでは代表執行社長兼CEOである平井一夫氏が登壇する経営方針説明を5月22日に開催する。
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