掃除機は単なる始まりでしかない。確実に近づきつつある高齢化社会の問題から人類すべてを救うために、われわれはロボットを必要としているのではないだろうか?
iRobotの最高経営責任者(CEO)であるColin Angle氏のプレゼンテーションは、TED Talkで語られるようなロボット工学の未来に関する話と、キッチンの床が定期的に掃除されるようになることの素晴らしさという思いがけない組み合わせとなっていた。
というのも、ロボット掃除機「Roomba」を製造している企業のCEOであるAngle氏は、人工知能の話をしても一部の人々の興味しか引くことができないため、同社の機器を売るには、人間よりもロボットの方が上手に掃除をこなせるということを一般人に納得してもらうしか方法がないと分かっているためだ。
同氏は「昔からこの業界には、テクノロジに魅せられ、アンドロイドのような歩行機械に夢を持つあまり、そもそもなぜロボットを開発しているのかを忘れてしまっている会社が数多く存在している」と述べている。
iRobotも同様のテーマを追求してきているが、SFの世界から抜け出てきたようなものを作り出そうとする小さな規模のプロジェクトから、ありふれてはいるもののはるかに大衆受けするロボットという方向へと徐々に針路を変更してきている。
同社は、4分の1世紀近くにわたってロボットの開発を続けてきている。その始まりは月探査用ロボットという、多くの少年が夢見るロボットの開発であり、続いて爆発物処理用やその他の軍事用のロボットの開発に移った後、おもちゃによってコンシューマー市場に進出し、ついにiRobotに大きな成功をもたらしたロボット掃除機という分野を築き上げた。
同社は今までに、自律型掃除機Roombaを1000万台も販売している。ずんぐりとしたアイスホッケーのパックのようなこのロボットの見た目は、人間型をした、いわゆるアンドロイドとは対極に位置している。また、宇宙探査から始まり掃除機に至るというのはおそらく、ロボット工学を追究する会社の製品が進化していく過程としてはあべこべだと思えるかもしれない。しかしAngle氏にとって、そういった考えこそがロボット工学分野でのブレークスルーを妨げていた理由なのである。
同氏は「ロボットは人間のまね事をするものだと考えるのは間違いだ。エンターテインメントが目的でもない限り、人工的な人間に見えるような人造人間を作り出そうとする、ロボット業界が試みてきたようなまねはすべきでない」と述べている。
iRobotのビジネスのおよそ90%は、こういった家庭用ロボットだ。ロボット掃除機に700ポンド、あるいは床のモップがけをするロボットに450ポンドを支払うというのは度を超えていると思う人もいるかもしれないが、この市場は年率30%で成長を続けている。こうした事実によって、同社の焦点を最先端技術から家庭に移したAngle氏の正しさが証明されたというわけだ。
Angle氏は、同社のロボットが人間型のドロイドではなく、目立たないものであることを望んでいる。同氏は「完璧な掃除ロボットは目立たず、話しかける必要もなく、ライトを点滅させず、人の視界に入ってこず、手で触れる必要すらない。これがわれわれの目標だ」と語っている。
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