掃除ロボットはiRobotで最も有名な製品だが、同社の現在のポートフォリオは、ミュンヘンでの同社新製品発表イベントで筆者が目にしたように、家庭用ロボットから軍事用ロボットや業務用ロボットにまで広がっている。例を挙げると、320ポンド(約145kg)のものを持ち上げ、複雑な地形を踏破できる同社の「PackBot」という軍事ロボットは、爆発物の処理工程を支援する目的で約5000台が戦場に配備されている。
Angle氏は「目の前にあるのはある意味において、SFに出てくるような印象的な機械に見えるかもしれないが、実際のところは世界最初の実用的なヒトと言えるものなのだ」と述べている。同氏の論点は、ロボットが人間に代わって作業を行うからといって、そのロボットを人間に似せる必要はないというものだ。
大型のPackBotとは異なり、展開が進められている「FirstLook」は人間が入り込むには狭すぎる、あるいは危険すぎる場所を探索するために兵士が使用する、靴箱くらいの大きさのロボットである。このロボットは複数のカメラを用いて状況を視認できるようになっており、軽いがゆえに屋根の上に放り上げたり、窓(二重窓でも構わない)から屋内に投げ込んだりできるところから、「Throwbot」(投げられるロボット)とも呼ばれている。
数万ドルもするロボットを屋内に投げ込むというのは、筆者にとって新鮮な体験だったが、iRobotのスタッフは筆者がロボットを壊してしまうことよりも、階段近くに置かれていたガラス製のパネルを壊してしまうことの方を心配していた。また、誰かがこの小さなロボットの操作を誤って薄暗い袋小路に移動させてしまった際、スタッフは赤外線カメラを起動してすぐにロボットを明るいところに脱出させていた。
大きさや能力の違いはあるものの、iRobotの製品群の多くには、受け継がれた財産とでも言うべき、共通する要素がある。Roombaに搭載されている、床をくまなく掃除するための「iAdapt」アルゴリズムはもともと、米国防総省(DoD)向けに開発された地雷探知用のアルゴリズムであった。詰まるところ、iRobotは1990年にボストンで起業された時から、Angle氏が言うところの有用性に焦点を当てていたのだ。
同氏は「われわれは、実用上の問題を解決しなければならないという考えと、製造コストよりも高い価値をもたらすロボットによってこの業界を生み出すのだという考えを抱いていた」と述べている。
掃除機のRoombaは、2人のエンジニアが1万5000ドルをかけた概念実証プロジェクトによって生み出されたものだ。そして、最初の3カ月で7万台が販売された。その需要があまりにも大きかったため、中国から空輸しようとした小売店もあったほどだ。
掃除機は人工知能や優れた工学技術の使い方としてはやぼったいものに感じられるかもしれないが、Angle氏はそのようには考えていない。同氏は「本当に大きな問題を解決した時に初めて、世界規模のメジャープレーヤーになれるという点を考えた場合、Roombaの爆発的な需要はこの業界が成長した証だと考えられる」と語っている。
ロボット工学は、SFに登場するような理想的なロボットを実現してくれるという世の中の期待に応えられないまま長い年月を経てきたが、突如としてとても熱い分野になったのだ。
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