国内外のテクノロジ界のイノベーターを集めたカンファレンス「新経済サミット2014」が、4月9日から2日間の日程で開催された。4月9日に行われたパネルセッション「ウェアラブルや近況通信技術などのテクノロジの変化がもたらす新しいライフスタイル」では、米Fitbit共同創業者 兼 CEOであるJames Park氏、米Livescribe会長 兼 CEOのGilles Bouchard氏、米PayPalグローバルプロダクトソリューションズ・バイスプレジデントのCarey Kolaja氏が登壇し、自社製品を紹介するとともに、ウェアラブル製品の可能性について議論した。
ワイヤレス活動軽量計の開発を手掛けるFitbitは、リストバンドタイプや歩数計タイプのウェアラブルデバイスを販売している。日々の活動量(歩行距離)や消費カロリー、睡眠時間などのデータをデバイスで取得し、ワイヤレス通信でスマートフォンやPCに送信して専用アプリで可視化することで、健康状態を把握できる仕組みだ。すでに日本でも販売されている。
Fitbitの特徴は、そのデザイン性である。シンプルでカラフルなリストバンド「Fitbit Flex」はファッション性が高い。女性向けファッションブランドの「トリーバーチ」とコラボレーションするなど、「ヘルスケアデバイスの枠を超えたポジション」(Park氏)だ。日本での販売戦略について同氏は、「日本人は健康意識が非常に高く、フィットネス需要も高い。ニーズは確実にある」と期待感を示す。
Livescribeは、手書きメモと音声を同時に記録してくれるデジタルボールペンである。本体にはWi-Fi機能を搭載し、記録した手書きメモ・音声は自動で「Evernote」にアップロードされる。Bouchard氏は、「デジタルデバイスが普及した今日でも、手書きでメモを残す人は多い。ある調査では、3分の1の人は手書きでメモをしているそうだ。そうであれば、手書きメモを自然な形でデジタル化するペンを提供しようと考えた」と開発のきっかけを語る。
「技術に人が合わせるのではなく、技術が人に合わせる。デバイスが(手書きでメモを残すという)ライフスタイルに合わせることで、ユーザーの利便性は飛躍的に向上する」(Bouchard氏)。
オンライン決済サービスを提供するPayPalの“ウェアラブルサービス”は、「GALAXY S5」と連携することで実現している。端末に搭載されている指紋センサによる指紋認証のみでログインでき、スムーズな支払いができる。また、腕時計型デバイスの「Gear 2」でも専用アプリによる決済サービスが利用できるようになるという。
ウェアラブルデバイス市場は始まったばかりであり、「製品開発や販売戦略は試行錯誤の連続だ」と3人は口を揃える。製品開発のきっかけもさまざまだ。Park氏は、Fitbit誕生のきっかけが「(任天堂のゲーム機)Wiiとの出会いだった」と明かす。
「無線機能と加速度センサを搭載した“ハイテクデバイス”が、たった29ドルで販売されている。『人体の動きをデジタル化して便利にする』といった(安価な)デバイスは、それまで見たことがなかった」(Park氏)
一方、Kolaja氏は、「クラウドコンピューティングが普及し、新たな競合他社が登場した。その中で、(いままでPayPalが提供してこなかった)新たなサービスが必要だと考えた。正直、2年間ぐらいは(新規サービスを提供できずに)停滞していた時期があった。しかし、トップが交代し、将来のビジョンを明確にすることで、さまざまな新サービスを提供できるようなった」と、大組織ゆえの課題を語った。
Bouchard氏も「販売戦略は慎重に行っている」という。「製品には絶対的な自信があったが、販売個数については先走らないように心がけた。新たなカテゴリの製品であり、万が一のトラブルにも対応できる体制を整えた」と振り返る。
「最初は生産工数も少なくし、製品発売のアナウンスも控えめにした。また、製品説明の機会も大きく広告を出すのではなく、パートナーとの協力体制を重視した」(Bouchard氏)。
今後、ウェアラブルが普及するには、何が必要なのか。3人とも「デザイン性は絶対的条件」と語る。
Bouchard氏は「Livescribeは開発段階からプロのデザイナーが携わり、カルティエやモンブランといったラクジュアリー製品を扱う店舗で発売したら成功した」と、既存のデジタルペンとの違いを強調する。同氏によると、複数のファッションレーベルからコラボレーションのアプローチがあるといい、「ファッション業界はICTに疎いという考えは過去の話だ」と語る。
Kolaja氏も「テクノロジとライフスタイルの融合が起こっている」と指摘し、「(ウェアラブルデバイスは)自分のスタイルにマッチし、身につけたいと思わせるデザインが大切」と力説する。同氏はスマートグラスの「Google Glass」を例に挙げ「現時点のデザインでは(女性にとっては目立ちすぎて)身につけたいとは思わないが、同社はメガネブランドのRay-Banにアプローチしており、こうした動きは喜ばしいことだ。また、BurberryのCEOがAppleにヘッドハンティングされた例もある。ウェアラブル・デバイスが普及するには、こうしたデジタルとファッションのコラボレーションが大切」と語った。
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