キヤノンマーケティングジャパン(キヤノンMJ)は4月10日、米国3D SYSTEMS製3Dプリンタのラインアップを強化すると発表した。これに合わせ、3DプリンタとMR(Mixed Reality:複合現実感)システム、3D CADソフトを組み合わせた3Dソリューション事業を開始した。
キヤノンMJでは、2013年11月から3D SYSTEMSのプロダクション3Dプリンタ(税別で3千万円~1億2千万円)の販売を開始している。今回は、取り扱い製品のラインアップを拡充し、パーソナル分野として教育やデザイン向けに「Cube X」や「ProJet 1000/1500」、建築やデザインなどプロフェッショナル向けに「ProJet x60シリーズ」「ProJet 5500x」など税別で50万円から3000万円程度までの製品を取りそろえた。
マニュアルは、日本語版と英語版を用意。メンテナンスは、3D SYSTEMSのライセンスを持った専門のカスタマーエンジニアが担当する。東京では5名からスタートし、6月末までに導入顧客がいる地域を中心に全国展開していく方針だ。
主に、製造業での導入を見込む。モノづくりの現場での大きな課題の一つは金型だ。コストが高く、納期に時間がかかるといった問題がある。自動車業界では、3Dプリンタを取り入れることで金型コストを10分の1に抑えられたり、納期が1週間から2週間だったものを1日にできたりした例もあるという。
他社に依頼せず自社で手がけられるようになれば、情報の流出を防げるメリットもある。導入にあたっては、経済産業省らが中小企業向けや大学・高専向けに支援する「ものづくり補助金」などが追い風になると見込んでいる。
なお、3Dプリンタのプロフェッショナルモデル「ProJet 3500 HDMAX」と「ProJet 660Pro」を東京・品川のキヤノンショールームに展示し、デモンストレーションや実機評価の機会を提供するとしている。
キヤノンMJグループは、キヤノンITソリューションズ(キヤノンITS)を中心に、CADやCAM、CAE、PDMなどの3D関連ソフトや、2012年にはMRシステム「MREAL(エムリアル)」を製造業向けに販売している。
MRは、現実世界とCGをリアルタイムに違和感なく融合させる映像情報処理技術だ。ヘッドマウントディスプレイを着用すると、コンピュータ内のCGと現実世界の映像を高精度に融合した立体的な映像が見られる。歩いたり、立ったり座ったりして位置を変えても、位置情報や姿勢センサにより、リアルタイムに正確な情報を表示できる。このシステムはすでに、“デジタルモックアップ”として自動車業界などでも導入されており、設計した製品の操作性やデザインの評価などが行われているという。
今回、新たに手がける3Dソリューションは、3Dプリンタで出力した試作パーツを組み合わせるなどし、よりリアルな3Dコンテンツを活用した設計や開発、生産プロセスまで一貫して構築することを目指すもの。
例えば、バイクの開発中にハンドルを握れるようにすることで、リアルな感触が生まれ、ユーザーの姿勢の変化やミラーとの距離、視線などを具体的に体感できるようになる。これにより試作回数を削減でき、開発期間の短縮に加えてコストや環境負荷の低減に貢献できるとしている。
3Dソリューションの価格は、3Dプリンタおよび3D関連ソフト、MRシステムの機種や装置構成、システム構成により異なるが、数千万円程度からを見込む。
キヤノンMJグループは、2014年から開始した3カ年計画「中期経営計画」の重点戦略として、“Beyond JAPAN”の推進を掲げる。グループの総力を結集し、これまでの枠組みを超えてスピード感のある経営を目指すもので、中でもビジネスソリューションセグメントの成長戦略においては、2016年に売上3750億円、営業利益123億円を目標としている。3Dソリューションなどの独自事業領域では、2016年に売上げ100億円以上、年平均110%の成長率を目指す。
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