イー・アクセス、KDDI、ソフトバンクモバイルの3社は、4月2日に共同で記者会見を開いた。総務省がNTTグループに対する規制を緩和する方向で検討を始めたことに対し、NTTグループの実質的な再統合や独占回帰が図られるとして、3社を含む65の事業者や団体が連名で、慎重な検証を求める要望書を提出したことを発表した。
今回提出した要望書は、総務省の情報通信審議会が、2020年代に向けた情報通信のあり方を検討するべく実施している「2020-ICT基盤政策特別部会」に関連するもの。2月に実施された同部会の審議会では、NTTグループのあり方についても議論されているが、複数の報道筋では、現在電気通信事業法により規制がかけられている、NTTドコモの携帯電話とNTT東西の固定通信のセット契約による割引サービスなどの解禁を、総務省が検討していると伝えられている。
KDDIの理事 渉外・広報本部長である藤田元氏は、「NTTグループの支配力は依然として大きいにも関わらず、規制緩和という議論の方向性が決まっているとすれば、極めて問題だ」と話す。現在の状態でNTTグループに対する規制が緩和された場合、NTTグループの実質的な再統合につながり公正な競争が困難になることから、総務省にはこれまでの政策の包括的な検証をした上で、必要な措置を講じて欲しいと要望書に記したという。
規制緩和に関する議論が起きたのには、そもそもNTTドコモの市場シェアが低下や、NTT東西の「フレッツ光」の契約数低迷などが背景にある。だがソフトバンクモバイルの常務執行役員 財務副統括担当兼渉外本部本部長である徳永順二氏は、「NTTは音声やFTTHでは7割を超えるシェアを獲得しているし、携帯電話でも下がったとはいえ45%のシェアがある」と、依然高い市場シェアを持つと指摘する。
さらに徳永氏は、ある程度のシェアを持つ事業者、つまり現在NTTグループに対して設けられている規制を定める、電気通信事業法の第30条を見直すことについても、その問題点を指摘している。同条では、特定のMVNOやISPなどの電気通信事業者を不当に優先的に扱うことや、コンテンツプロバイダや端末ベンダーなどに対し不当に規律・干渉することなどを禁止すると定めている。NTTドコモはこの規制があることで、MVNO事業者などにサービスを一律に提供しなければならいため柔軟性が失われているとし、撤廃を求めている。
しかし、この禁止行為規制を見直した場合、「NTTグループ同士の排他的な連携ができるようになり、他社と不公正なサービスができるようになる。競争環境が歪められてしまう」と、徳永氏は規制撤廃がもたらす影響の大きさについても解説。慎重な議論が必要との見解を示した。
藤田氏は「2020-ICT基盤政策特別部会の開催意図は、2020年代に向けた競争政策のあり方に対する議論であったはず。NTTのあり方の包括検証だけをクローズアップするのはいかがかと思っている」とも話しており、あたかもNTTグループの規制解除だけが部会の議論の焦点であるかのように扱われていることにも、危惧を示している。
一方で、徳永氏は「今回の要望は、今のNTTグループに設けられたルールを変え、不公正な競争環境にするべきではないというもの。規制がイエスかノーかという議論ではない」と話しており、あくまで要望は結論ありきで規制解除へと進んでしまうことへのけん制が目的であり、議論のゴールを求めるものではないと説明した。
2020-ICT基盤政策特別部会は、4月8日より関係各社へのヒアリングを実施。その後議論を進めた上で、秋には最終報告書を用意する見込みとなっている。
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