新規インストール約10万--美少女Mobageがコミケ出展で得た“数字だけではない効果”

 2013年12月、ディー・エヌ・エー(DeNA)がコミックマーケット(コミケ)85の企業ブースに「美少女Mobage」として初出展。その経緯や得られた効果について聞いた。

 コミケはさまざまなジャンルの創作物を扱った同人誌の即売会で、現在は夏と冬の年2回に開催。コミケ85においては開催3日間で来場者数は52万人にのぼるという、日本でも有数の大規模イベントとなっている。

 DeNAはソーシャルゲームを展開するMobageを運営していることでよく知られている。一方で近年は国内外の大型イベントには目立つ形で出展をしていなかった。今回、俗に“ギャルゲー”と呼ばれるような、かわいい女の子たちが前面に押し出したキャラクターゲームを集める形で、ブース名も美少女Mobageとして出展を行った。

  • スマホ版美少女Mobageのサイト。マスコットとなっている女の子は「モバ美」

 今回のコミケ出展を担当したDeNAパートナーアライアンス統括部の岩朝暁彦氏は、もともとキャラクターゲームのプロモーションとして、ひとつの大きなくくりを作って効果的にアプローチしていこうという構想があり、なんらかのイベントに絡めて展開したかったという。「やはりリリースのタイミングは社内外含めてまちまちですし、予定からずれることもあります。大きなマイルストーンを作らず単発単発でなし崩しに展開するのは効果が薄いと感じたんです」(岩朝氏)。

 もっともコミケ出展のきっかけは別のところから降ってわいたように飛び出したという。「社内で、コミケは色々とすごいらしいと聞くが、そこにうちは出展しなくていいのかという議論があったからです。もっとも企業ブースの出展は毎回抽選になるほど人気が高いですから、申し込みをして出展できる保証もないため、本当に出ることになるとは思ってなかった」(岩朝氏)と振り返る。

美少女MobageはIT企業ではなくコミケの出展企業としての意思

 抽選が通り出展が決まると、岩朝氏曰く「ギャルゲーと美少女ゲームのスペシャリスト」を20人ほど集めて出展内容案を検討。そこではイラスト入りモバコインカードなどの物販、ゲストを呼ぶといったさまざまな案が出されたが、この時点ですでに10月に入っており、現実的なところと美少女Mobageのタイトル群の周知と興味喚起を中心に考え、無料配布物と装飾、コスプレをするコンパニオン、各タイトルのプロモーションビデオの上映をする方針に決定したという。「コミケ運営スタッフはみな大型ゲームイベントの出展経験がない上、コミケ出展経験者もおらず、完全に手探りでした」(岩朝氏)。

  • 岩朝暁彦氏

 ブース名もMobageではなく美少女Mobageとし、特設サイトも制作。さらに美少女Mobageにあわせて、マスコットとなる女の子「モバ美」も作成した。

 「出展社リストを見たときに、単にMobageと書かれているブースに来たくなるのかという意見があって、その通りだと。IT企業が初出展するという話題作りだけはなく、コミケに出展するにふさわしい形にしたい思いもありました。ただ、本来であればブランドやマスコットキャラとなると、社内的にもさまざまな検討が行われるのですけど、あまりに時間がない。なのであくまで美少女Mobageはブランドではなくブース名、モバ美はバナーに何もないと寂しいから彩りを加える飾りですと説明していました(笑)」。

 最終的に用意した配布物は「アイドルマスター シンデレラガールズ」(バンダイナムコゲームス)と「とある魔術の禁書目録 頂点決戦」(KADOKAWA アスキー・メディアワークス ブランドカンパニー)のイラストをあしらったビジュアルがプリントされたショッパーを1万弱、特製綴じ込みポスター付カラー冊子「電撃美少女Mobage」を約4万冊、各タイトルのヒロインが描かれた「コミケ限定ブロマイド&カード」を約10万枚制作し、それをランダムに3枚1パックにして3万数千パック分を準備。カードタイプのゲームが多いことからリアルカードの制作という案はすぐに決まったが、ランダム封入のパックにしたのは、単に配布するだけでなくパックを開く楽しみを提供したかったとしている。カードにはガチャチケットやゲーム内アイテムがもらえるコードを入れるなど工夫を凝らした。また冊子とカードにはQRコードを入れ、ゲームへの誘導も図った。これらを3日間に分けて配布した。

  • 当時配布したショッパーの「アイドルマスター シンデレラガールズ」のデザイン

    (c)NBGI

 特にショッパーの人気が高く、3日間とも開場から30分前後で配布が終了。その後も問い合わせが後を絶たなかったという。冊子やカードパックもそれぞれ閉場時間前にその日の予定分の配布を終了し、3日間で全て配りきった。「あとはコンパニオン9人に13キャラ分の衣装を用意しました。配布もそうですけど、配り終わった後はフォトセッション的なこともしていました」(岩朝氏)。

 では実際に得た効果はどのようなものだったか。直接的な成果となるゲームのインストール(新規プレイ)については、13タイトル分を紹介し、タイトルによっては数万のインストール、出展タイトル全体のインストールとしては10万件を超える効果があったのではないかという。「たとえばゲームサービスを開始して半年経過したタイトルは、そこまで新規インストールされることはないのですが、コミケ前後の期間では、半年以上前に出たタイトルであってもコミケ前後で1日あたり数千を超えるインストール数に、またリリースが比較的新しいタイトルの場合、1日で数万を超えるインストール数となったタイトルもありました。半分ぐらいが長期間サービスしている作品でしたし、どれも想定を上回る数字で、対費用効果としても十分に見合ったものだったと感じています」(岩朝氏)。

 ちなみにコミケ期間中とその前後の新規プレイヤーの動向についてもこんな話をしていた。「会期前日あたりまで、美少女Mobageサイトのアクセスやインストールが増えだして、会期中は午前10時から夕方ぐらいまでパタッと動きが止まるんです。みなさんリアルが忙しくてゲームしている場合じゃないですから(笑)。2日目ぐらいからインストール数が増えていって、会期が終わって落ち着いたお正月三が日には、かなりアクティブに遊ばれていたようです」(岩朝氏)。

 もっとも岩朝氏は、数字ではない効果のほうが大きかったと振り返る。

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