同じ文章でも、フォントの種類やサイズが異なるだけで、まったく違った印象を受けるものだ。読者にどのような印象を与えたいのか、作り手がどのようなメッセージを伝えたいのかによって、紙質、表紙のデザイン、タイトル、本文のフォントの種類やサイズなどが決められ、本が作られていく。本の制作に携わったことのない人には、なかなか知る機会のないことだが、本書では本作りに携わる人々の考えや、本の制作過程を垣間見ることができる。
本は著者や作家が文章を書けば、すぐに売りに出せるというものではない。編集者が原稿をまとめ、校正者が文章を校正し、DTPオペレーターが組版をして、デザイナーやイラストレーターが装幀を考え、印刷会社で印刷し、書店が販売する。ザッとまとめて書いただけでも、いかに多くの人が関わっているかが分かる。翻訳書であれば翻訳者が翻訳をする工程も必要だ。それぞれの工程にはさまざまな悩みがあり、葛藤がある。
どれほど考えられて1冊の本ができあがっているのか、その知識はプレゼン資料や企画書などで少なからず文章を書いたり、デザインを考えたりしているビジネスパーソンにも役立つはずだ。もちろん実際に本のみならず印刷物に関係している仕事をしている人には、大いに参考になる。
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