映画やドラマでおなじみの字幕。作品に没頭する内に、読んでいることさえいつの間にか忘れてしまうほど、作品の一部に溶け込んでいる字幕に出会って、ちょっとした感動を覚えることはないだろうか。そのように自然な字幕を作るのに、どれほど多くの人が関わり、苦難の道のりがあるのか、一般の人が知ることはほとんどない。本書はその字幕を作る翻訳者の苦労の一端を知ることができる楽しいエッセイ集だ。
1秒間にたったの4文字。日本語の字幕の場合は、この文字数が基準となっている。字幕は原語の意味を限られた文字数で、いかに簡潔で読みやすい日本語にできるかが勝負だ。文章をただ文字どおり日本語に訳せばいい翻訳とは、まったく異なる苦労がある。本書の内容は、字幕翻訳者である太田直子氏の「ボヤキ」や「嘆き」ではあるが、作品と仕事に対する愛があふれている。
最近では映画もドラマも吹き替え版が多く、3D版の映画に至っては、字幕が飛び出すので読みにくいという理由で、敬遠されがちだが、字幕でなければ見ないというファンもまだまだ多い。字幕制作の裏側を垣間見ることで、作品に対する見方が変わり、映画を見る楽しみが少しばかり増すかもしれない。
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