井上氏はDeNAと提携した狙いについて「ECのノウハウに加えて、Mobage(モバゲー)を始めとするサービスで、モバイルでの使い勝手やUI、ユーザーの送客などに対して豊富な知見がある。新しいトレンドに対する感度も大手のSIerより遥かに高く、ベストなパートナーだと思った」と説明。実際、UIを刷新したことで既存のユーザーからも「商品の買いまわりが良くなった」という声を聞くようになったそうだ
DeNAでは現在、ユーザーが登録している地域などによって、サイトや商品の見せ方を変えるなどのチューニングを進めている。また、食品や日用品は普段買っているものを選んでしまいがちだが、野菜と一緒に鍋の素をお勧めして“ついで買い”を促すなど、「リアル店舗での買い物の楽しさをレコメンド技術などによってどう演出できるかを考えていきたい」と、DeNA EC事業本部 ショッピング事業部流通企画グループの松本紘樹氏は語る。
「マーケットの規模を考えると、我々が楽天やアマゾンなどのビッグプレイヤーを一気に出し抜くのは難しい。しかし、まだまだEC化していない領域はある。モバオクや(ファッション通販サイトの)モバコレで培ってきた技術やPDCAを回すノウハウを生かし、これから伸びていく食品や日用品の市場でナンバーワンを目指したい」(松本氏)。なお同社は1月16日にサンドラッグと提携し、DeNAショッピング内に医薬品やコスメを販売する「サンドラッグ.com」も開設している。
SEIYUドットコムのグランドオープンにあわせて、DeNAショッピングの会員ID「DeNA ID」とSEIYUドットコムの会員IDを共通化。DeNAショッピングのユーザーはDeNA IDを使ってSEIYUドットコムで買い物ができるほか、得られたDeNA IDのポイントを、DeNAショッピングやSEIYUドットコムで使えるようにした。
こうした取り組みの結果、約1年でSEIYUネットスーパー時代に約42万人だった会員数は約60万人へと拡大。売上はネットスーパー便のサービス提供エリアを中心に前年比で約5割増、オーダーアイテム数も約4割増になるなどリニューアルの効果を実感することができた。また、ネットスーパー便を利用するユーザーの約2割が日用品を販売する配送センター便も併用しているという。
井上氏は「お米や水など重たいものだけでなく、お肉や野菜といった生鮮食品を買う人も多い。消費者の方々にも『食品をネットで買うのもアリだな』と思っていただけるようになってきた。また、これまでアマゾンなどでオムツなどの日用品を買っていた人が、実は西友の方が安いと知って移ってくるケースも増えている」と手応えを語る。同社では今後も、EDLPを軸とした“低価格”、3万点を超える“品揃え”、DeNAのECノウハウや開発技術による“使いやすさ”の3つの強みを訴求しながら、ユーザー数を増やしていきたい考えだ。
また、実店舗とウェブの連携もさらに強めていく。たとえば、米ウォールマートでは、スペースなどの問題から店舗に置けない商品のQRコードを店内に設置し、それをスマートフォンのカメラでスキャンすると、同社のECサイトへアクセスして購入できる施策を展開している。実は日本でも一部の店舗でこうした取り組みを進めているそうだ。現在はフリースなど衣類や日用品が中心だが、ユーザーの動向を見ながら商品の幅を拡大することも検討しているという。
NTTドコモが有機野菜の宅配サービス「らでぃっしゅぼーや」を買収するなど、さまざまなウェブ事業者が参入し、さらなる競争の激化が予想される食品のネット販売。しかし、ネットスーパーを提供している各社もスマートフォンには対応しているものの、まだPCサイトの補完という位置づけで、使い勝手が良いとは言い難いサイトも少なくない。西友の事例を見ても分かる通り、今後は価格や品揃えに加えて、いかにウェブにおいても実店舗と近い“買い物体験”を提供できるかが、勝負の鍵を握ることになりそうだ。
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