ドコモがEC事業に参入する狙い--キャリアならではの強みとは

 2012年に入り、NTTドコモがコマース事業に本腰を入れている。1月30日に有機野菜や無添加食品の宅配サービス「らでぃっしゅぼーや」の買収を発表したほか、6月11日には、音楽・映像ソフトを販売する「タワーレコード」を子会社化すると発表している。

  • ドコモ執行役員 マルチメディア担当 スマートコミュニケーションサービス部長の阿佐美弘恭氏

 同社は、2009年にテレビ通販のオークローンマーケティングを子会社化しているが、それ以降は目立ったECの取り組みなどは行ってこなかった。そんなドコモが、なぜ今年に入り次々と物販を強みとする企業を買収しているのか。ドコモ執行役員 マルチメディア担当 スマートコミュニケーションサービス部長の阿佐美弘恭氏に狙いを聞いた。

ECはスマホでブレイクする

 ドコモがEC事業に注力する理由の1つとして挙げられるのが、急速なスマートフォンの普及だ。阿佐美氏は、既存のデバイスと比べてスマートフォンはネットショッピングに向いており、端末の普及にともない、ECを展開するための環境が整備されつつあると説明する。

  • 潜在市場の顕在化

 確かに、PCやフィーチャーフォンでもネットショッピングは利用できるが、PCは立ち上がるまでに数分間待たなければならなかったり、フィーチャーフォンに比べると操作が複雑だ。一方のフィーチャーフォンも、画面が小さくネットショッピングに向いているとは言い難い。

 「これがスマートフォンやタブレットであれば、画面が大きく、立ち上がりも早い。それにタッチパネルというインターフェースも使いやすい。これらによって個々の課題が1つずつ顧客が許容できるレベルまで下がっている。特に映像や書籍、ショッピングなどは、スマートフォンが普及すると一気にブレイクするのでは」(阿佐美氏)

キャリアとEC事業者の共通点

 もう1つの狙いがグローバルプレーヤーとの差別化だ。阿佐美氏は、グーグルやFacebookをはじめとするグローバルプレーヤーは、従来の広告モデルに限界を感じており、ユーザー課金モデルやデジタルコンテンツの販売にシフトしてきていると話す。

 ドコモも自社で動画や電子書籍を販売する直営ストア「dマーケット」を展開しており、デジタルコンテンツの領域では競合にあたる。そこで同社が次なる領域として焦点を当てたのがリアルな商品の物販だった。

 ECでは基本的に顧客に住所や氏名、クレジットカード番号などの“質の高い情報”を登録してもらう必要がある。キャリアも携帯電話の契約の際に、顧客からそれらの個人情報を預かることから、EC事業者とは“顧客との関係”が似ていると阿佐美氏は説明。ECは「ドコモの持つビジネスのアセットを最も有効活用できる領域」と語る。

  • グローバルプレーヤーの分類

  • グローバルプレーヤーの展開

  • 顧客基盤とビジネス領域

 また、最近はSNS上の友人同士の口コミなどを利用して、商品やサービスを販売する「ソーシャルコマース」が注目されているが、阿佐美氏は「信頼できるプレーヤーでなければ顧客は個人情報を教えない。Facebookが9億人いるといっても、住所まで登録している人はそこまで多くない。検索エンジンやSNS事業者が、デジタルコンテンツの領域まで入ってくるのは比較的簡単だが、ECには高いハードルがある」と語り、キャリアだからこそ強みを発揮できる領域と自信を見せる。

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