無料通話・メッセージアプリ「LINE」の快進撃が止まらない。2013年1月に念願の1億ユーザーを達成したと思えば、わずか半年であっさり2億ユーザーも突破。その勢いは留まることを知らず、11月25日にはついに世界で3億ユーザーを超えた。
同社はこの日、「2014年に5億」というさらに高い目標を掲げ業界を驚かせたが、その言葉に勝算はあるのか。LINE代表取締役社長の森川亮氏と、LINE事業の責任者である執行役員の舛田淳氏に聞いた。
森川氏 : 毎回そうなのですが社内的には淡々としています。それはLINEの成長スピードが鈍化していないので、いまの状況が続けば2014年の5億ユーザーもみえるし、その先もみえるからですね。なので、より速いスピードでいいものをしっかりと出し続けていくことが大切だと思っています。最近は海外のローカライズも強化しているので、それらが1つ1つ立ち上がってくることも重要です。
舛田氏 : まさに通過点だと思っていますし、あえて2014年の5億は固いと言いましょう(笑)。ただ、1億が2億に、そして3億になっていく中で、我々に求められるものの大きさは非常に強く感じています。その中で、いかにもともとLINEが持っていたスピード感だったりチャレンジ精神を維持できるかが大事になってきていると思いますね。
森川氏 : やはり1億の時と3億の時だと、随分周りの反応が違いますよね。1億はまだこれから伸びるかなという状況ですが、3億を超えると米国で成功している企業やメディアからも注目されるようになりました。じゃあ5億になった時にはどうなんだろうというところは、まだ日本では誰も経験したことがないと思うのでワクワクしています。
舛田氏 : 知名度や存在感は出てきたのかなと思います。我々のビジネスモデルやサービスの方向性、「メッセンジャー+α」という考え方をいろいろなところでご評価いただけていることは、非常に嬉しいことだと思います。ただ、モンスターサービスに肩を並べたかというご質問のお答えとしては、まだ“リトルモンスター”くらいにしかなれていないですね(笑)。やはり私たちが伸びている市場はアジアが中心ですので、米国や中国などでも伸ばしていかなければ、胸を張ってモンスターサービスの仲間入りをしたとは言えません。そこは2014年の課題なのかなと。
舛田氏 : これはネットワークやデバイスといったモバイルインターネットの進化に非常に関係していると思います。もともとあったメッセンジャーというのは、回線があまりよくなかったり、デバイスのスペックが低い状況で、いかに早くシンプルにコミュニケーションをとれるかということに注力して作られています。我々はそれらのサービスを第一世代と呼んでいるのですが、WhatsAppもこの第一世代の中では最適なサービスだったと思います。
ただ、ネットワークが4Gになってデバイスのスペックも上がってくると、ヴィジュアルコミュニケーションみたいなものが、いろいろなところで求められてくる。そうすると皆さん、メッセンジャーも次のステージに進みたいと思いますよね。我々はまさにその次の世代だと思っていますので、その中で「メッセンジャー+α」という部分で、いかに個性を出していって、ユーザーの求めるものに答えていくかかが大切だと思っています。
それと、まだスタンプコミュニケーション自体は日本に軸足があります。いまは日本のユーザーの感情表現にあったスタンプを中心に作っているのですが、これからは国ごとにあったものを作らなければいけないと思っています。やはりグローバルで提供しているスタンプよりも、現地のデザイナーと組んで試行錯誤したローカルスタンプの方が使われているんですよね。私たちは日本で数年間学習したことで、日本の皆さんが求めている感情はこういうものなんだとある程度は理解することができたので、それらをベースに他の国の人たちにはどういう感情表現がふさわしいのかを勉強しながらチューニングをしているところですね。
舛田氏 : ゲームは非常に伸びていますし、「LINE マンガ」などその他のサービスも存在感を見せつつあるというところでは、うまく成長できているのではないかと思います。2013年はコンテンツプラットフォームとしての可能性をより強く感じることができた1年でした。すでに提供を発表している「LINEミュージック」などもそうですが、プラットフォームは“人とコンテンツが出会う場”なのだと思います。この第4クオーターは次のステージに進むためにプラットフォームの整理をしているところですね。
それと、新しいチャネルとしては天気やニュースなどのポータル的なサービスですね。たとえば、「LINE NEWS」などはまだプロトタイプに近いものですが、アップデートを繰り返すことで、確実にユーザーはついてきています。あとは、12月にプレオープンした「LINE MALL(ラインモール)」。これまでとは違う領域のサービスですので、ユーザーの動きを見ながらLINEとの連携や機能追加などのブラッシュアップをして、春のグランドオープンを迎えたいですね。
舛田氏 : LINEとしてコマースをやるからには、やはりスマートフォンだからできることや、もともとあったものに対してイノベーションを起こせるものを提供したいと思いました。たとえば、PCの時代のECというのは商品を検索して条件のいいものを選ぶ、ある種の“指名買い”に近いものですよね。これがスマートフォンになると最安値がどうこうよりも、もっと感覚的になっていくのだと思います。そこで私たちはコンテンツと同じで、“商品と人が出会う”新たな場を提供したいと考えました。
そのために、LINE MALLではスマートフォンで片手でウィンドウショッピングをしているような感覚で使えるインターフェースや、誰でも3ステップで簡単に出品できる仕組み、モニタリングによって買う人も安心して利用できる運営体制などを用意しました。やはりこれまでと同じことをやっても誰も「(EC事業に)よく進出してくれたね」とは言ってくれません。LINE的な斜めの観点から入ることで、こういう形のECの再定義もあるよねと感じてもらいたいと思います。
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