CNET Japan Live 2013

言葉と技術が先行するモバイル広告で求められる“今後の対策”

 朝日インタラクティブは12月10日、「CNET Japan Live 2013 ~全社員マーケター時代のビジネス戦略~」を開催した。スマートフォンやタブレットなどモバイルデバイスの普及が進むとともに、FacebookやTwitter、LINEといったソーシャルメディアの急拡大による影響を受け、大きく変貌してきたマーケティングに焦点を当て、さまざまな角度から、考察、論議した。

 ここではPremier Trackより、「モバイル広告の現状と未来--オンラインとオフラインが融合する新マーケティング」を取り上げる。講演には、D2Cのドコモメディア事業本部本部長兼事業開発室室長である田中紀之氏と、medibaの広告事業本部副本部長であり、スケールアウトの取締役を務める宮本裕樹氏が招かれ、モデレーターをCNET Japan編集長の別井貴志が務めた。

データの質を見直す流れがやがて来る

  • 田中紀之氏

 D2Cの田中氏はドコモのキャリアデータを元に、いわゆるビッグデータを活用する部署に所属する。宮本氏が所属するmedibaは、KDDIと博報堂、電通が資本提供する広告企画の会社で、KDDIからの業務委託を受け、auスマートパスなどの運営、配信を行っている。スケールアウトはその子会社で、DSP(Demand-Side Platform)やSSP(Supply-Side Platform)、DMP(Data Management Platform)などを用いた広告配信のための技術を提供している。

  • 宮本裕樹氏

 ドコモとauという2つのキャリアでそれぞれビッグデータを扱う2人が、今後の広告手法がどう進化するのかといった視点から、話が進められた。宮本氏からは数字を用いた市場分析が紹介され、デバイス別のユーザー利用時間はテレビとPCはほぼ横ばいにある中でモバイルが大きく伸び、国内だけでなく、グローバルベースでのデータでもウェブよりアプリ利用が促進されていることがわかったとしている。広告もアドネットワークを集約する動きが見られ、マルチデバイスに対応する流れが強くなっているという。さらに、「FacebookやLINEといったプラットフォームにひもづいた商品が巨大なユーザーを抱え込む状況になり、混沌とした状況から大きな変化がやってこようとしている」と分析。そうした状況をふまえ、2014年の重要になるキーワードとしてデータフィード、ファーストパーティデータなど6つをあげている。

 田中氏は、別井編集長が「モバイルは接触時間が長くなっているのに広告費が流れてこないと言われる状況についてはどう考えているか」と質問したのに対し、「市場としての魅力は従来のネット広告以上にあるものの、実際にプロモーションの決裁権を持つ人たちがレガシーな状態にあり、まだしばらく時差があるだろう」とコメント。また、もう1つの問題点として、成功事例が確立していないところに次の技術が登場し、導入しようとした時にはすでに古くなっていることから導入が進まないのではないかと指摘した。そして「気持ち悪いけれど面倒なのでいつものせんべい布団に寝てしまうような状況」と独自の解釈を見せた。

  • 日本のスマホ広告のトレンドの変遷

 業界では新しい用語もいろいろ登場しているが、ウィキペディアにもなく、検索しても明確な説明が見つからないまま、言葉だけが認知されている状況も生じているという。実際の購買の流れにしても、情報はネットで手に入れているけれど、買うのは実店舗を利用しているケースが多く、テレビで何となく知って、スマホで調べて、店で買うというパターンになっていると分析する。そうした状況が変わらない限り、広告の出稿先も移行しないと考えられる。

 成功の基準となる指標についても、従来のクリックを基準とする計算が続いており、それが広告の質よりも単なる価格コンペになりつつある状況を生み出しているという。とはいえ、そうした状況も変化の兆しはあり、データの質を見直す流れがやがて来るのではないかと両者は分析している。具体的には、CRM(顧客管理)データを結びつけ、適切な形で広告を提供できる会社やメディアが生き残るのではないか。それゆえに、今後のオンラインビジネスでは、質の高いユーザープロファイルを蓄えていく方向に向かうのがポイントになるかもしれないといった意見が出たところで、講演はしめくくられた。

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