12月10日に開催されたイベント「CNET Japan Live 2013 ~全社員マーケター時代のビジネス戦略~」で「CNET Japan CMO Award」の受賞者が発表された。CMO Awardは、日本で数少ないとされる最高マーケティング責任者(CMO)を対象に優秀なCMOを選び、日本企業でのマーケティング活動の普及を狙った。
受賞したのは、ゲッティイメージズ ジャパン 代表取締役の島本久美子氏、コニカミノルタ CSR・広報・ブランド推進部長の小林右樹氏、リンナイ eビジネス推進室 室長の福本啓史氏の3人。表彰式では、この3人によるパネルディスカッションも行われ、マーケティングに関わる自身の活動内容や意見を披露した。
司会進行役はCMOワールドワイド代表取締役社長の加茂純氏。受賞者の選定では「顧客に近いコンテンツを最大限に利用している会社の個人」「CSV、CSRを企業戦略の中心に据えている会社の個人」「クラウド等を顧客のために使い、評価を受けている会社の個人」という3つの視点を基準にしたことを明らかにし、3人それぞれの受賞理由を解説した。その後、受賞者3人が自身の事業内容やマーケティング活動の詳細を紹介した。
ゲッティイメージズの島本氏はまず、同社が扱う写真のスライドショーで事業イメージを紹介。同社は広告などにおける写真を提供するストックフォト事業と、メディア媒体に報道写真を提供する通信社としての事業の2つをメインに行っている。
2009年に島本氏がロンドンから日本のゲッティイメージズに転属された際、日本での同社の知名度があまりにも低いことに驚いたと打ち明けた。海外ではニュース番組でも毎日のようにゲッティイメージズの写真を目にし、ロンドンではタクシーの運転手でもゲッティイメージズの存在を知っているが、日本国内ではフォトグラファーですら同社を知らない人が多いことにショックを受けたという。
日本で知名度が低い理由について島本氏は、「海外ではビジュアルが欲しければまずストックフォトから探し、なければ仕方なく撮影しようという流れになる。日本では、写真と言えばいちから撮影しようというところから始まり、その慣習が変わっていない」と指摘。海外ではプレスリリースを打つ際にも「写真を一緒に提供しないとニュースに取り上げられないことは常識」として考えられており、「1面の見出しと写真によって売れ行きがすごく変わる」ことから、メディアにおいてはビジュアルのインパクトの重要性についての意識が高いという。
日本の識字率は非常に高い一方で、識字率が低い国もまだ多い。そういった国でマーケティングを行うグローバル企業は「広告を見れば、どの会社かすぐに連想できるようなブランドに合ったビジュアルコンテンツの使用をすごく意識している」ことも、ゲッティイメージズのストックフォトの利用頻度が高い一因になっていると同氏は考えている。
日本におけるこのような状況から、同社や同社サービスの知名度を上げる方法として同氏が取った戦略が、報道写真を扱って「通信社としてのゲッティイメージズを売り出そう」というもの。かつて「ロイター発共同」でロイターの知名度が国内で向上したのにあやかり、「ゲッティ発共同」を目指すとともに、国際オリンピック委員会(IOC)に認定された唯一のフォトエージェンシーであり、スポーツ選手の写真のライセンス提供を行っているといった強みを活かして、スポーツ写真を中心に提供してきた。
さらに、同社が持つ膨大な写真データと、その写真1つ1つに結びつけられたメタデータをもとに「ストックフォトでなければ提供できないサービス」にもフォーカス。2012年9月に「NAVER まとめ」で利用できるようAPIを整備し、同サービスのユーザーがビジュアルを用いたインパクトのある記事を作れるようにしたという成果にもつながった。
司会の加茂氏が「海外のメディアはゲッティイメージズの印象的な写真を使っているのに、国内のメディアの写真はどれも似たようなものが多いが」と問われると、島本氏は「フォトグラファー(個人)のレベルよりも、何を目的に撮っているかが重要」と応じた。
たとえば日本の新聞社は「記録を取る」ことを重視しており、スポーツであれば、ボールがゴールに入る瞬間は絶対に逃せないとされている。一方、ゲッティイメージズは「記録よりもいかにインパクトを与えるかという点で、選手の表情などが非常に重要」と考えており、ゴルフ大会でも同社のフォトグラファーだけがカップインのシーンでほかの報道陣と全く反対の方向から、選手が振り返りポーズを取る瞬間を撮影したという例を挙げた。
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