CNET Japan Live 2013

共感を得るのが重要--CMOアワード受賞者に見るマーケティングの難しさ - (page 2)

その会社“らしさ”を売り込むのがマーケティング

 CSR、CSVを企業活動の中心に据えて活動しているとして表彰されたコニカミノルタの小林氏は、もともとはマーケティングではなく長い間人事に関わってきた。そのため、「マーケターとしての常識から外れる突拍子もない話が出てくるかもしれないが」と前置きしながら、コニカミノルタのブランディング活動の一端を紹介した。


コニカミノルタ CSR・広報・ブランド推進部長 小林右樹氏

 コニカミノルタはかつてカメラやフィルムを扱っていたBtoC企業だったが、「2006年にそれらの事業をスパーンとやめ」、印刷用の複合機やデジタル印刷システムなどの情報機器事業を主力としたBtoB企業へと転換した。144カ国に販売・サービス体制を構築し、海外売上比率は70%を超え、主力の情報機器事業においては82%に達している。

 日本国内ではコニカミノルタに関する一般の知名度はそれほど高くないのが現状だが、日本以外の29カ国でカラー複合機はシェアナンバーワンかナンバーツーのポジション、2012年度のカラーのプロダクションプリント機器では全世界でシェアナンバーワンを誇るという。

 このように、同社ではすでにグローバルビジネスが主となっているが、日本企業が一般的に海外展開を図るうえでブランド力が弱いのは、特に日本の製造業が“プロダクトドリブン”だから、と語った。「これまではプロダクトそのものがブランドの認知を広げる役割をしていたが、BtoCからBtoBの企業になると、その手法は通用しない」のだという。

 「“マーケティング 3.0”という考え方が2010年から出てきたが、CMOが出てこないのは日本企業がまだまだプロダクトドリブンであることの残滓、“マーケティング 2.0”的な考え方が主流だからではないか」(小林氏)

 グローバル企業としてのブランドをどのように作っていかなければならないか。これに関しては、日本企業の多くに「“ブランドインテグリティ”という考え方が欠落しているのでは」と小林氏は指摘する。

 「ブランドインテグリティは、日常的には“誠実さ”と訳される。誠実なブランドを作るのがこれからのBtoB企業の肝になるんじゃないか」と言い、さらにBtoB企業のブランドを作る根幹として“サステナビリティ”と“シェアードバリュー”にも軸足を置かなければいけないと話した。

 「顧客をはじめとする社会と企業が生み出す価値を分かち合って、企業活動それ自体が社会の役に立っているというブランドイメージを作っていくことが、これからの“勝ちパターン”ではないか」と力を込めた。


 こうした考えから、マーケターの仕事というのは「われわれの会社“らしさ”を売り込むこと」であり、「“らしさ”というのは、その会社が発する匂い、生き様。これに顧客をはじめとする一般社会の共感を得ないと、ちゃんとしたブランドはできない」と言い切る。コニカミノルタでは、同社のビジョンである「足腰のしっかりした、力強く成長を続ける会社」と「世の中に支持され必要とされる会社」が、“サステナビリティ”と“シェアードバリュー”に相当し、「新しい価値の創造」という経営理念も“勝ちパターン”のストーリーに合致する。

 「インテグリティを含め、目指す企業イメージを顧客や社会にシェアしていくこと」がブランディング活動の基本的な考え方、原点というわけで、同社が行っているプラネタリウム事業についても、それを通じて社会の共感を得るという点で、単なる社会貢献ではなく事業戦略の1つであると語った。

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