親子で楽しむ「知育」アプリで世界狙うスマートエデュケーション

藤井涼 (編集部)2013年12月20日 13時00分
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 スマートフォンの普及や通信技術の発展によって、ITは音楽や映像などのデジタルコンテンツを楽しむためのものから、より多くの消費者の生活を便利に、そして豊かにするツールとして進化を遂げつつある。この連載では企業のウェブでの取り組みを通じて、それぞれの領域におけるテクノロジの持つ可能性について考える。

 今回のテーマは“知育”。生まれた時からネットや携帯電話が当たり前のように存在する環境で育った子どもは“デジタルネイティブ”と呼ばれており、スマートフォンやタブレット端末を使った学習との相性が良いといわれている。この領域にいち早く着目し、主に乳幼児を対象にした知育アプリを開発、提供しているのがスマートエデュケーションだ。

 同社は2011年6月に設立されたばかりの若い企業だが、過去にリリースされた音楽ゲームや絵本など13本の知育アプリ「こどもアプリ」シリーズの累計ダウンロード数は2年で500万を超え、月間アクティブユーザーは80万人におよぶ。また、これまでにシリーズBで約3億5000万円の資金を調達するなど、投資家からも高い期待を寄せられている。

スマホが子どもの「学び」を変える

 「世の中はネット社会に変わっているのに、日本の絵本の売上げはこの20年間ほとんど変わっていない。つまり僕の世代もいまの子どもたちも同じものを与えられて育っている。それは問題だと思うが、これまではそこに対する解決策がなかった。しかし、スマートデバイスなら子どもの学びを変えられる」――こう語るのはスマートエデュケーション創業者の池谷大吾氏だ。

  • スマートエデュケーション代表取締役の池谷大吾氏(左)と太田垣慶氏(右)

 池谷氏は社長でもあり、3児(4歳、6歳、8歳)の父親でもある。同氏は使い方を教えていないにもかかわらず、自宅で子どもがスマートフォンで自分なりに遊んでいる姿を見て、ITリテラシーの有無に関係なく誰でも使えるスマートデバイスと、その操作性を生かした学習に強い可能性を感じたという。そして、2011年に当時役員を務めていたシーエー・モバイルを退職して起業することを決意したと振り返る。

 「子ども向けの教育事業は規模が大きいが、比較的アナログで行われていることが多い。また、いまでこそ各社も参入してきているが、当時の国内を見渡してみると、この領域を目指すスタートアップや大手企業はほとんどいなかった。ただし、海外にはいくつか事例も出始めていて、ここには市場があると確信した」(池谷氏)。

 スマートエデュケーションが参入するまでの知育アプリの領域は無料アプリが中心だったが、その分クオリティが低いものも多く、良質な知育アプリを使いたいというニーズに対して供給がない状況だった。そのため、同社がリリースしたアプリは「最初からドカンといった」(池谷氏)。また、当初から有料楽曲への課金率や継続率も高かったという。

親子で遊ぶ知育アプリ--幼稚園とも連携

 同社のアプリが支持されている理由はいくつかある。まず“親子で一緒に楽しむ”ことを念頭に置いていることだ。たとえば、音楽ゲームアプリ「おやこでリズムえほん」は、画面上に表示される楽器のマークに合わせてタイミングよく同じ楽器をタップしていくリズムゲームだが、使用できる5つの楽器のうち、上の2つを親が、下の3つを子供が操作することを前提に作られている。

  • 「おやこでリズムえほんDX」のイメージ。上の2つの楽器を親が、下の2つの楽器を子どもが操作する

 またアプリの利用時などに「お子さんを抱っこして遊んでください」と、親子で使ってもらうためのガイドも表示される。これによって“子どもにスマートフォンやタブレットのゲームで勝手に遊ばせて、親は好きなことをやっている”といった、知育アプリの利用において懸念されやすいシチュエーションが生まれにくい。

 各アプリの完成度の高さも他社との差別化要因になっている。スマートエデュケーションでは、関東近郊の6つの幼稚園や保育園と連携しており、新作のアプリがある程度できあがったタイミングで、実際に子どもたちに使ってもらう機会を設けている。アプリ開発担当者である太田垣慶氏は、子どもの反応を見ながら必ず2つは大きな改善を実施するようにしていると話す。

 「子どもに『楽しい?』と聞くのは禁止質問に近い。楽しかったら自分からもう1回やりたいと言われたり、アプリの世界に集中してくれるが、そうじゃないと周りの子にちょっかいを出したり、違うことをやりたがったりする。10人中7人くらいがそのような反応をしたら絶対にその作品は失敗する。シビアだが非常にやりやすい」(太田垣氏)。

  • 幼稚園や保育園と連携して、実際に子どもに新作アプリを使ってもらう

 また、アプリのキモである収録コンテンツが充実していることも強みだ。おやこでリズムえほんでは、「アンパンマンのマーチ」「ジングル・ベル」といった定番の楽曲から、「恋するフォーチュンクッキー」(AKB48)や「雨のち晴レルヤ」(ゆず)などJ-POPの最新楽曲まで約300曲を取りそろえており、1曲100~300円で購入できる。また月額500円で複数の楽曲が遊び放題になる「おやこでリズムえほんDX」などもある。

 10月にはNHK Eテレで放送されている教育番組「おかあさんといっしょ」や「みいつけた!」のオリジナル楽曲とスナップショットを使用したリズムアプリ「おやこでリズムあそび」を公開し、GooglePlayの「ベストアプリ2013」の「ベストコラボアプリ部門」で大賞を受賞した。

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