「最も成功した失敗」--Digg創業者のKevin Rose氏が語った起業とトレンド

 Kevin Rose氏はDigg、Revision3、Pownce、Milkなどのベンチャーを立ち上げた起業家だ。Diggを立ち上げたのは27歳という若さ。当時からはっきりとした物言いで知られている。また、飼い犬を救うためにアライグマを投げるというやんちゃさも併せ持った人物だ。そのRose氏が10月末にアイルランド・ダブリンで開催されたベンチャーイベント「Web Summit 2013」に登場し、Diggの失敗、ベンチャー投資家からみたトレンドなどについて語った。

 Web Summit初登場のRose氏は、リラックスして少し落ち着いた印象だった――そう見えたのは、筆者が過去に出席した別のイベントで、ゲストスピーカーとして登場することになっていたRose氏にドタキャンされた経験があったからかもしれない(Rose氏は当時、Milk創業後でモバイル関連のイベントでその話をすることになっていた)。そのMilkが2012年にGoogleに買収され、Rose氏はGoogle Venturesに勤務することになった。現在はベンチャーの発見や育成に携わっている。Web SummitではRose氏が登場すると会場から声がかかるなど、人気ぶりをみせた。


Kevin Rose氏

“最も成功した失敗”のDigg

 Rose氏について語る際、まず最初に挙げられるのはDiggだろう。2004年に開始したハイテクニュースのアグリゲーションサービスだ。Diggの大きな特徴は、編集スタッフを持たず、コミュニティの人気により上位に表示されるニュースが決まる点だ。一方でDiggはその構造から、スパム問題にも悩まされた。Diggはその後、Betaworksに買収されている。対談相手のTech Crunchのエディターが「Diggは“最も成功した失敗”と言われるが……」と言うと、Rose氏は「うん、そう思うよ」と素直に認める。「もっとよいエグジットができればよかったと思う。当時やろうと思っていたことは現在でも実現していない」と続ける。

 「僕がやりたかったことは、本物のデモクラシー(民主制)なんだ。編集者はいらない。クラウド(人々)の知恵により、最もよいコンテンツが昇格される(仕組みを作りたかった)」とDiggで目指したことを振り返る。失敗の理由については、「スパムがあって難しかった。ちゃんと動くアルゴリズムを構築できなかった」と分析した。Rose氏がもう1つ挙げた失敗が、「サブカテゴリ」だ。サブカテゴリを作るというアイデアはあったが、Rose氏はかたくなに拒んだという。

 一方、後発のニュースアグリゲーションサービスであるRedditは対照的にサブカテゴリ(Subreddit)を提供し、これが成功につながった。Redditと比較しながら、「Redditは賢明だった――オープンソースにしてアルゴリズムを公開した。編集担当を置き、コンテンツをフィルタリングしてクリーンにした。その結果、スパムのないきれいなフロントページができていた」「RedditがSubredditを開始したとき、ロングテールのトラフィックが起こり、ニッチでクールなコミュニティがSubredditに集まった。DiggからRedditへの流出が起こった」と分析した。

 Diggは戦略を見誤っただけでなく、技術的な問題もあったようだ。「MySQLに問題があり、当時まだ成熟していないCassandraに全部を移行してしまった。これが支障を生んだ。技術を早期段階で使ってしまったのがよくなかった」と言う。このような技術上の問題により、やりたいことが制約されてしまったと明かす。

 だがRose氏にとってDiggは失敗かもしれないが、楽しい時期だったようだ。「ラッキーだったと思う。Diggが登場した頃、FlickrDeliciousMySpaceなどがあり、1つの時代をみんなで一緒に作った。その後、みんなそれぞれの道を進んでいる」とRose氏は語る。その後のFacebookやTwitterでソーシャルインターネットが起爆するが、ソーシャルインターネットは自分たちの黎明期を経て開花した、との思いが垣間見れた。

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