Teslaでは、電気自動車というアイデアを売り込むにあたって「(スピードが出ず、長距離走行は無理などという)人々の認識を土台から変える車を作りたいと思った」と明かす。そこで登場したのが、電気自動車のスポーツカー「Tesla Roadster」だ。「“セックスアピール”があり、技術的にも素晴らしい車を作ることで、(電気自動車に対する)認識を変えたかった」とMusk氏。完成までに時間をかけ、なんどもテストドライブを行ったという。
Tesla Roadsterで計画通りのスローな出発を切った後に、世に送り出したのが高級セダン「Model S」、製造台数を増やしていくという戦略だ。Model Sはレビューでの評価も高く、Musk氏の狙い通りに進んでいるようだ。「今年はターニングポイントになったと思う」とMusk氏は自分に言い聞かせるように述べる。実際、Teslaは今年、創業10年目にしてはじめて黒字化したようだ。
だが先は長い。「電気自動車の普及率は低い。数千万台の新車が製造されているが、そのうちのわずかを占めるに過ぎない。すべての新車が電気自動車になったとしても、古い車がすべて(電気ベースに)入れ替わるには20年はかかるのでは」とMusk氏は言う。なお、右ハンドルバージョンのModel S製造は2014年の3~4月ごろに開始する予定という。
自動車業界におけるTeslaの関係を、モバイルにおけるiPhoneにたとえ、AppleのSteve Jobs氏と自分を重ねる声に対し、Musk氏はJobs氏を次のように讃えた。「製品にものすごくフォーカスしていた。細部までのこだわりは類を見ない。Jobs氏とAppleは全体のハイレベルと細部レベルの両方で人を喜ばせることにフォーカスしていた。これはわれわれも、Model Sで実現したかったことだ」(Musk氏)
終始穏やかな口ぶりだったMusk氏が、最も力を入れて語ったのが自分を囲むチームだ。「SpaceXにはすばらしいチームがある。自分に関心が集まりすぎていて認識されていないが、これは正しくない。ものすごい才能ある人が集まったチームなんだ」とMusk氏は語る。
「企業を作るときに大切なことは、才能の集中。トップレベルのプレーヤーが集まったナショナルスポーツチームを作るようなもの。特定の分野に才能を持つ人を集めることが大切」とも述べた。チームを誇り大切にする姿勢、苦境にあって最後まで諦めない姿勢にMusk氏の人柄や成功の背景が垣間見える。
もう1つが、失敗を恐れない姿勢だ。「失敗は怖い?」と聞かれると「失敗への恐れはある」とMusk氏は迷わずに言う。「だからといって、やめないんだよね?」とLittle氏が聞き返すと、Musk氏は笑ってうなずく。すると、隣に座っていたKenny首相をはじめ、会場からは大きな拍手が沸いた。
「恐れは理にかなったもの(何かをやろうとするときに、当然の感情)として、無視する。理にかなっていても、前に進むのが遅くなるから」とMusk氏。「最初に批判的なフィードバックをできるだけたくさんもらうこと。友達に聞いてみること。最初は傷付けたくないから言わないかもしれないけれど、友達はどこが悪いかよく分かっている」と会場の起業家たちにアドバイスした。
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