パナソニックは、2013年度末までにプラズマパネルの生産を終了し、プラズマテレビ事業からも撤退する公算が高そうだ。
正式な発表は、10月31日に発表が予定されている2013年度上期(4~9月)決算発表の席上、代表取締役社長の津賀一宏氏が出席し、説明する見通しだ。そうなれば、社内向けには同日午前にも津賀氏から説明されるだろう。
パナソニックの薄型テレビ事業は、プラズマテレビを軸に推進してきた経緯がある。
プラズマテレビは、大画面化に優位であること、黒の表示能力が高いなど自然な表現が可能であるといったことが評価されたものの、その一方で、低価格化が進むとともに、表示の明るさで勝る液晶テレビが、市場での存在感を発揮。さらに液晶テレビの大画面化の進展や高画質化が進むことで、プラズマテレビの市場での優位性が薄れていった。
当初は日立製作所やパイオニアなどがプラズマテレビを発売。海外ではSamsungやLG Electronicsもプラズマテレビを発売していたが、国内では、2008年にプラズマテレビからの撤退を発表し、プラズマ陣営そのものが縮小。それに伴い、量販店店頭でもプラズマテレビの展示スペースが削減されたことも、プラズマテレビの陰りに影響を及ぼした。
パナソニックがプラズマテレビからの撤退を決める背景には、液晶テレビが主軸となるなかで、将来にわたってプラズマ事業で収益性を確保することが難しいと判断したことが大きい。
パナソニックは、2011年度には7721億円の赤字、2012年度に7542億円の赤字と、2年続けて巨額の最終赤字を計上した。その元凶のひとつとされるのが、プラズマ事業であった。
2012年度のテレビ事業とパネル事業の合計では、マイナス885億円の赤字。そのうち、液晶テレビの売上高は前年比3%減の3814億円にとどまったが、プラズマテレビの売上高は49%減の1440億円、出荷台数は前年比58%減の191万台にとどまり、一気に半減。プラズマパネルの生産設備の稼働状況は限定的となった。
パナソニックのプラズマパネルの生産は、尼崎工場で行われている。
尼崎工場は、尼崎P3、尼崎P4、尼崎P5という3つの生産棟で構成されているが、現在稼働しているのは尼崎P4だけ。2007年の竣工時の発表によると、尼崎P4の1ラインあたりの生産能力は月産約18万枚で、フル稼働時には月間50万枚の生産能力を持つとされた。
そして、2009年に竣工した尼崎P5は、フル生産時には月100万台もの生産能力を実現するという計画のもとに建設された大規模生産棟であったが、ほとんど稼働しないまま、現在に至っている。P3は2010年以降、プラズマパネルの生産をすでに中止。一時は太陽光発電パネルの生産拠点へと転換も考えたが、結果として棚上げとなっており、現在は稼働していない。
過剰な生産設備は同社の業績を圧迫し、それが業績悪化につながっている。製造業にとって生産設備が動かないことは、業績に与えるマイナスのインパクトが大きいのは明らかだ。
パナソニックの津賀氏は、自らがAVCネットワーク社のカンパニー社長の際に、約720万台の年間出荷を誇ったプラズマテレビ事業を約250万台の規模にまで大幅に絞り込んだ経緯がある。
工場を安定稼働させようとすれば、その分安売りをしなくてはならず赤字を拡大するという悪循環に陥っていたなかで、津賀氏は赤字の製品を絞り込み、収益性の高い付加価値モデルだけで展開しようとした。また昨年来、プラズマディスプレイを業務利用する方向を加速させてきたが、プラズマパネル全体に占める構成比は低く、起死回生策にはならなかった。
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