大阪で開催中の「B Dash Camp 2013 Fall in Osaka」。10月7日最後のセッションには、任天堂 代表取締役社長の岩田聡氏が登壇。GCAサヴィアン名誉顧問で一橋大学大学院教授の佐山展生氏との対談で、自身の経営哲学を語った。
1889年に花札の製造を開始、その後ゲームウォッチなどさまざまな玩具を展開し、1983年にファミリーコンピューター(ファミコン)を販売するに至った任天堂。今でこそゲームのプラットフォーマーとして確固たる地位を築いているが、岩田氏は「実は多くの新しいことにチャレンジし続けてきた会社だ」と説明する。
さらに岩田氏は、当時の既存事業にとらわれず新たな挑戦を続け、ファミコンを生み出すことになった任天堂の先代社長であり、9月に亡くなった山内溥(ひろし)氏の座右の銘として、「失意泰然、得意冷然(物事がうまくいかなくても、あせらず落ち着く。うまくいってもおごらずにいるという意味)」という言葉を紹介。「任天堂の波瀾万丈の歴史を体現している」(岩田氏)と語った。
ここから岩田氏は、山内氏に学んだ経営哲学を語る。ビデオゲームは生活必需品ではないので、ハードは“仕方なく”買うものであるし、娯楽品なので我慢してまで使うユーザーはいない。さらにどんな商品であろうと必ず飽きられるため、「驚き」が重要だ。また、我慢してでも使うものではない商品だからこそ、市場調査などは無意味だという。また、そういった特殊な商品であるがゆえに重要なのは、他社との差別化をし、独自性を持つことだという。
それと同時に、重要なポイントに絞り込んで商品を作る「フォーカス」も重要であると語る。一時期はゲームセンター向けの筐体なども開発していた任天堂だが、あるときを境に同事業から撤退する。それは家庭用のゲームに注力するためだった。
佐山氏はここで岩田氏に、任天堂のグローバル戦略について尋ねる。これに対して岩田氏は「任天堂はビデオゲームの代名詞として認知されているが、グローバルストラテジーはない」と回答した。
だが、注力してきたことは2点あるのだという。それは「ユニークでよそと違うこと」、そして「現地の人の言うことをうのみにしないこと」。例えば人気シリーズの「ポケットモンスター(ポケモン)」は、米国のスタッフから「米国でかわいいキャラクターが受けるはずがない」と言われたという。岩田氏いわく「筋肉モリモリなピカチュウの絵」がスタッフから届き、「真面目にこうした方がいい」と言われたが、そんな絵を採用していたら今のポケモンの成功はなかったのではないかと振り返る。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」