ポケットにすっぽりと収まる「iPhone」という小型デバイスは、最初からそれほど小さかったわけではない。
実際のところ、初期のデモ設備の1つは非常に大規模なものであり、Appleが2007年に満を持して発表したおしゃれな携帯電話型のコンピュータというよりも、初期の巨大なメインフレームコンピュータという描写がぴったりくるものであった。
The New York Timesが米国時間10月4日にオンライン上で公開した長い雑誌記事のなかで、Appleの当時の幹部Tony Fadell氏は2005年半ばにSteve Jobs氏から、最終的には携帯電話のタッチスクリーン技術につながる初期のデモ設備を見せられた時のことを振り返っている。
Fadell氏は、「彼(Jobs氏)は『Tony、ちょっとこっちに来てくれ。これが、われわれの取り組んでいるものだ。どう思う?これから電話を作り上げられると思うか?』と言った」と語っている。またFadell氏は、Jobs氏が試していたデモ設備について、「それは巨大なものであり、部屋いっぱいの大きさだった。天井にはプロジェクタが据え付けられており、Macの画面を、3~4フィート四方(およそ90~120cm四方)の大きさでその表面に投影するようになっていた。そしてMacの画面に触れることで、ものを動かしたり、何かを描いたりできるようになっていた」と描写している。
プロジェクタを使ったこのような仕掛けを、実際の携帯電話の初期のプロトタイプと呼ぶのは正しくないかもしれない。これはむしろ、最終的に携帯電話のプロトタイプになる祖先、あるいは原始のスープに近いと言えるだろう(同記事では、完全に動作するiPhoneのプロトタイプが6つ存在しており、そのハードウェアやソフトウェア、デザインはすべて異なっていたとも記している)。しかしこういった事実は、Appleがその2年後にサンフランシスコのMoscone CenterでiPhoneを華々しく披露するまでに、同社がどれほど広範な努力を積み重ねる必要があったのかを如実に表している。
またFadell氏は、マルチタッチ技術を適切に機能させるために、どういったことが他に必要だったのか、例えば同技術をガラスの下に埋め込めるLCDベンダーを見つけてきたり、新たなアルゴリズムを調整してピクセル単位での精度を保てるようにするといったことについても述べている。そしてまったく新たな、モバイル機器に焦点を絞ったOS、すなわち「iOS」を生み出すという大変な作業もあった。
言うまでもなく、これは長くてつらい仕事だった。同記事によると、ある上級幹部は最初のiPhoneのコストが1億5000万ドル以上になると考えていたという。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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