米国時間9月26~27日、サンフランシスコでクラウドノートアプリを開発するEvernoteが同社のイベント「Evernote Conference 2013」を開催した。イベントにはシリコンバレーを視察中の内閣府特命担当大臣で情報通信技術(IT)政策担当の山本一太氏も基調講演に参加し、「日本の企業はシリコンバレーを上手く活用していくべき」との見解を述べていた。
日本でもPCやスマートフォンなどで広く使われているノートアプリ「Evernote」の展望を、同社CEOのPhil Libin氏の基調講演とインタビューから探る。
シリコンバレーの多くの企業が株式上場や買収によるエグジットを目指す中で、Evernoteは「100年続くスタートアップ」を標榜する珍しい企業だ。カンファレンスの冒頭で、Libin氏は「今年1年で大きな進歩を得た」と、スライド上のプログレスバーを「4%」から「5%」に増やし、会場の笑いを誘った。
2014年でEvernoteは5周年を迎え、ユーザー数は7500万人を突破し、急ピッチで拡大を続けている。これもシリコンバレーの企業としては珍しいが、ユーザーの半数以上は米国外におり日本が第2の市場だ。また世界で8拠点を開設し、開発者は3万人を数える。テクノロジ企業としてのエコシステムの広がりも順調と言える。
日本市場について聞いてみると、「個別の市場を見ながらプロダクトを開発すべきでない」とLibin氏は語る。その一方で、日本におけるユーザーの行動、特にアナログの体験に対して注目しており、製品を作る上でインスパイアされる要素が大きいという。
今回の基調講演の目玉は、必ずしもEvernoteのクラウドやアプリの話題ではなかった。というのも、Windows版やMac版のアプリは既にバージョンアップされており、またiOS 7に対応するiPhone・iPad向けアプリも発表済みだ。Evernoteがデジタルノートの対応を強める中で、必要なピースを埋めていくには、アナログの世界との取り組みが必要だった。
まず発表されたのは、3MのPost-itとの連携だ。Libin氏はPost-itのことを「ヒーロー」と称し、書いて、剥がして、貼り付ける──という完璧なアナログ体験をデジタルに取り込む方法をEvernoteアプリで実現している。iOS 7向けのアプリでおなじみの黄色・ピンク・グリーン・ブルーのPost-itのスナップショットを撮影すると、紙の部分を自動的に認識し、その部分だけのノートを作ってくれる。Post-itの色まで認識し、リマインダーと連携することも可能だ。
次に、PFUのScanSnapにEvernoteモデルを登場させた。ベースモデルは現在販売されているScanSnap iX500だが、外装にラバー素材を採用して柔らかい手触りを実現し、ボディにはEvernoteのアイコンを配置している。このScanSnapはEvernoteへの取り込みにしか利用できない代わりに、複数の種類の書類を読み込ませても自動的に名刺・書類・写真などに分類する機能や、名刺を取り込むだけでその人のLinkedInアカウントと紐付けるといった機能を搭載し、利便性を高めている。
これまでモレスキンとコラボレーションし、ノートを撮影してEvernoteに保存できる仕組みを作っているが、アナログの文房具での体験を大切にしながらデジタルで管理するという手法は、デジタルノートとしてのEvernoteの存在感をより際立たせることになるだろう。
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