9月2日~9月9日のAppleに関連するCNET Japan/ZDNet Japanのニュースをまとめた「今週のApple一気読み」。
本項は毎回、米国西海岸時間の日曜日に執筆している。今年はシリア問題が依然として緊迫していること、米国の金融政策に対する注目が集まっていることなどから、iPhone発売の事前情報がさほど大きく扱われていないように思われる。しかしAppleが9月10日に発表イベントを開くことは、ローカルニュースでも既に報じられた。
Appleが「どんな新端末が登場させるのか」に注目が集まる。また日本ではNTTドコモがiPhoneを扱うのではないかという報道が相次ぎ、また中国でも世界最大のChina Mobile向けに廉価版iPhoneが提供されるのではないかと期待され、「誰が売るのか」も話題の的だ。
日本でNTTドコモが販売を開始する場合、携帯電話会社3社がそろってiPhoneを扱うこととなり、ユーザー獲得競争に拍車がかかることになりそうだ。携帯電話会社をまたいだユーザー動向はさほど大きくならないと見られるが、注目すべきはドコモが抱えるフィーチャーフォンユーザー(まだスマートフォンに切り替えていないユーザー)のiPhone移行がどれだけ進むかだ。ドコモにとっては、データ通信料金の向上が見込めるだけでなく、VoLTEなど通信投資の効率化も進むだろう。
またAppleにとっては、日本の最大手でのiPhone取り扱い、特にドコモのフィーチャーフォンユーザーの存在は、日本でiPhone販売台数を押し上げる残された数少ない可能性となるはずだ。
NTTドコモ、次期「iPhone」を販売か(9月6日)先週のCNET Japanにも、たくさんの新iPhoneに関する記事が並んでいる。早速振り返っていこう。
皆さんは新しいiPhoneにどんな機能を求めるだろうか。CNETの記事中での予想の他に、米国の読者向けのアンケートも実施され、その結果も興味深い。例えば、米国ユーザーのニーズに「大型化」があり、既に5インチクラスのAndroidスマートフォンを使ったことがあるユーザーからはニーズがある。
日本のユーザーにも米国のユーザーにも共通して求められそうなのは、NFCだ。iPhoneを日本で利用する場合の大きな弱点は「おサイフケータイ」に対応しない点だ。NFCが採用される可能性は低いと見られているが、変わってセキュリティを強化するための指紋センサの搭載が取り沙汰されている。ただし、調査会社ガートナーはNFC決済の不振から市場規模の予測を40%以上も下方修正していることから考えると、Appleが急いで採用する必要もなさそうだ。
外装は金属ボディが好まれているが、中身の性能向上は常にニーズがある。より高速なプロセッサとメモリシステム、より多いストレージ、そしてより長いバッテリー持続時間は、特に競合を意識することなく挙がる声だろう。出回っている噂からは、64bitベースのA7プロセッサの登場が意識されるが、最新のMacBook Airは、新プロセッサと新OSでバッテリー持続時間を30%近く向上させている。iPhoneについても、新プロセッサと新しいiOS 7によって、処理速度だけを追究するのではなく、バッテリーを長持ちさせることを意識した仕様になるのではないだろうか。
またカメラについては、先週Microsoftによる買収が発表されたNokiaのWindows Phone、Lumiaが4100万画素という圧倒的な高画素カメラを搭載しており、スマートフォン市場の中でのハイエンドとなっている。iOS 7でも、写真アプリやフォトストリームの強化など、「写真」がiPhone体験の中心になることが示唆されている。画素なのか、レンズなのか、画像処理なのか、あるいはそれら複数になるのか、いずれにせよカメラ機能の向上は期待できるのではないだろうか。
次期「iPhone」に欲しいもの--15の可能性を勝手に予測(9月3日)これまでiPhoneは、ハイエンド1モデルを年に1回ずつリリースし、過去のモデルは2年間にわたって廉価版として販売してきた。この方針を2013年モデルから切り替えるのではないか、と見られている。
廉価版iPhoneの存在だ。モデル名は「iPhone 5C」と言われている。リーク画像にはカラフル(Colorful)なプラスティックの背面ケースが見られる他、中国(China)市場での販売が見込まれる。またApple Storeで300ドル台で、携帯電話会社との契約なしに購入できるカジュアルさ(Casual)も予測されている。実際のCにはどんな意味が込められるのだろうか。
機能面では1世代前のプロセッサの採用(例えば最新機種でA7が搭載されるなら、A6)、カメラ性能の引き下げ、LTE非対応、Siri非対応などの差別化がなされる可能性があるという。そのかわり、iPodのようなカラフルな展開は魅力的に映る可能性がある。
そして中国市場への対応だ。China Mobileでは3G規格もW-CDMAやCDMA2000とは違う、TD-SCDMA方式を利用している。LTEも、欧米や日本で利用されているFD-LTEではなく、TD-SCDMAの発展系として位置づけられるTD-LTE方式を採用予定だ。廉価版iPhoneが中国市場を狙う場合は、まずTD-SCDMAに対応することからはじめるのではないだろうか。
「iPhone 5C」は発表されるのか--廉価版iPhoneに関するうわさを再検証(9月2日)WWDCではiOS 7に加えて、Mac向け次世代OSであるOS X Mavericksがアナウンスされた。いずれも秋にリリースとされているが、iOS 7は9月10日のイベントで発表されると見られるiPhoneの発売のタイミングで既存のユーザーもアップグレードできるようになるはずだ。
一方今回のイベントでMacBook ProやiMacなどのMac製品の刷新はないとみられ、OS X Mavericksが発売されることもないと見られている。一方で、新型のApple TVについては言及があるのではないかとの憶測が飛んでいる。
新型「Apple TV」、来週のイベントで登場?--船荷証券から推測(9月5日)Appleのモバイル転換による成功はめざましく、業界を一変させたことに疑いはない。しかし米国の経済学者P・グルーマン氏は、これからより多くの試練がAppleに待ち受けていると指摘する。引き合いに出しているのは、現状お世辞にもモバイル戦略が上手くいっているとは言えないMicrosoftだ。ちょうど先週、MicrosoftはNokiaの携帯電話部門を中心とした大半を買収すると発表したばかりだ。
グルーマン氏の論評は、「誰を相手にビジネスをしているか」という視点だ。Appleはジョブズ氏のプレゼンテーションに代表されるように、あっと驚く商品を大きなインパクトを持って発表し、消費者を楽しませてきた。ジョブズ氏からリーダーが変わって幾分プレゼンテーションに迫力がなくなったが、ポイントはそこではない。消費者を相手にしている点が、リスクだと言うのだ。
Microsoftの顧客の中心は、保守的な企業のITマネージャーであり、数十年間にわたってビジネスを独占的に成功させてきた点を、グルーマン氏は評価している。そのため、市場が変化しているとはいえ、Microsoft製品からすぐに彼らが離れるとは考えにくいという。
一方Appleの顧客は「きまぐれな」消費者であり、より新しかったり魅力がある製品を見つけると、そちらへ流れてしまう点が、Microsoft以上に苦難に直面する可能性だとの指摘だ。そしてAndroidという競争相手を前に、既にその状況に入り込んでいるかもしれない。
もしもこのまま気まぐれ消費者を相手にする場合は、新しさでの競争をテンポ良く続けていく必要があり、Appleは何らかのギアチェンジが求められる。あるいは、AppleがMicrosoftのように、よりたくさんの企業や学校などの顧客を増やしていくことができれば、長期的な成長を保つことができるという視差でもある。
筆者としては、気まぐれ消費者を楽しませつつ、保守的な企業のITマネージャーに支持される、上手くバランスを目指して欲しいと思う。
アップルはMSよりも多くの試練に直面する可能性--米経済学者P・クルーグマン氏が示唆(9月3日)CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
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