名前で告げて決済完了--カードにもコインにも触れない「Square Wallet」 - (page 2)

Square Walletでカードにもコインにも触れない決済

Square Walletを起動すると、Squareに対応する周囲の店舗が表示される。タップするとチェックインできる
Square Walletを起動すると、Squareに対応する周囲の店舗が表示される。タップするとチェックインできる

 Square Walletは店舗を利用するユーザーがスマートフォンにインストールするアプリだ。ユーザーアカウントを作成し、クレジットカード番号を登録すれば準備完了だ。

 アプリには、自分の周りにあるSquareを導入している店舗が近い順に表示される。そして自分が今いるお店、もしくは非常に近いお店には「PAY HERE」の表示が出る。このとき、Blue Bottle Coffeeにいたためお店のカードに「You are here」と表示されていた。ここでお店の名前をタップするとチェックインでき、支払待機状態となる。

オーダーと自分のSquareアカウントが紐付けられると、自分のオーダーが画面に表示される。面倒なチップの金額計算も、画面のタップだけで済む
オーダーと自分のSquareアカウントが紐付けられると、自分のオーダーが画面に表示される。面倒なチップの金額計算も、画面のタップだけで済む

 ここから先は、普通にカウンターに並び、オーダーするだけ。画面には「At checkout say "Put it on Taro Matsumura"」と書いてあり、その通り自分の名前を告げると、店員さんはSquareのレジアプリが動いているiPadで筆者の名前を見つけて、いまオーダーした商品と筆者のSquareのアカウントを紐付けてくれた。すると、筆者の手元のアプリに、オーダーした商品とその価格が表示され、チップの金額を選んで「Done」ボタンを押すと支払いが完了した。

 手順はいくつかあったが、あっという間の出来事だった。名前を告げて、アプリを1~2タップするだけで、紙幣にもコインにも、プラスティックのカードにも触れずに、支払いが終わる。しかも、何にいくらチャージされたかは、手元のアプリに記録されていて確認することができる仕組みだ。

 ちなみに、行きつけのお店でわざわざチェックインをしなくてもよいように、自動的にチェックインする機能もある。

会話で解決する「スマート」

チェックインすると、画面に自分のアイコンと店舗のアイコンが並ぶ。レジでの台詞も表示されていて、初めてでも使いこなせる
チェックインすると、画面に自分のアイコンと店舗のアイコンが並ぶ。レジでの台詞も表示されていて、初めてでも使いこなせる

 店頭で名前を告げるというコミュニケーションを介在させるアイデアは、全てを自動化しようというデジタル化、スマート化とは逆行しているようにも見える。確かに、Square Walletを使うことで、プラスティックのカードを手渡してスワイプしてもらったり、レシートもしくはiPadの画面にサインをするといった手順は省略された。それでも、オーダーして電子マネーをタッチして支払う方が手順は少ないかもしれない。

 ただ、Squareが解決する問題を考え直してみると、タッチして決済ができるデバイスへは行き着かないことが分かる。Squareは非常に安価な投資、すなわちアカウントを作れば無料で配布しているSquareリーダと無料のアプリ、そしてスマートフォンかタブレットで、クレジットカード決済に対応する仕組みを提供している。そこに、高いコストがかかる非接触IC読み取り機が介在することは、そちらの方がスマートだとしても、現時点ではあり得ないのだ。

 そこで、ユーザーの手元にもあるスマートフォン向けのアプリとGPS、そしてユーザーの「名前」を活用して、クレジットカードを介在させない決済を実現したのがSquare Walletといえる。筆者の名前を見て、「日本から来たの?」「うちのオーナーが日本の喫茶店が好きで」というちょっとした会話を交わすことになった。実際に体験してみると、小銭を数えている時間がコミュニケーションの時間に変わったことに気づかされた。

 お店にはオペレーションや業務フローが存在しているが、そのフローの中に簡単に組み込めることも、現在のテクノロジにはとても重要だ。いくら未来的な仕組みでも、店員や顧客が使いこなせなければ、宝の持ち腐れになる。一方で、店頭のフローがあるため、こうした会話を介在させた解決を織り交ぜることもできる。

 テクノロジだけの視点で見ればタッチして決済と顧客データの蓄積が行えればより未来的かもしれない。しかし特にローカルビジネスでは、顧客との親しい関係作りが重要となる。Squareはテクノロジーを隠すことでローカルビジネスを裏から支えるスマートさを実現しようとしている。

 実際に体験してみると、店と顧客の間で顔と名前によるコミュニケーションが手軽に作り出せるようになる。手順が減り、会話が増える方が、スマートではないだろうか。

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