このようなtDCS是認論は、趣味に熱中する人々と、tDCSのプラス効果を証明した高度な科学研究の両方から上がっており、人間能力向上の次なる波として脳刺激に対する興味を促してきた。しかし、科学はそれに後れを取っている。
「前もって有効性の実証や安全限度の設定を行わずに脳刺激デバイスを一般販売すれば、安全面に不安が残る。脳刺激については慎重に事を進める必要がある」。サウスカロライナ医科大学脳刺激研究所の所長であるMark George氏はこのように述べた。
まず、脳刺激とは意味の範囲が広い用語で、一見したところ害のなさそうなtDCSから、ときには電極を直接頭に埋め込む侵襲的で危険な種類の脳深部刺激療法までをも表すことがある。こうした手法は薬物抵抗性のうつ病など重篤な神経疾患の患者だけに施されるもので、米食品医薬品局(FDA)が認可した機器を使って行われる。また、厳格な規制の対象になっており、訓練を受けた専門家がいる安全な研究所内で実施される。
それに対して、tDCSデバイスは多くの場合FDAの認可を受けておらず、その有効性は使用される機器の種類やテスト対象としている効果によって変わる。そのためfoc.usヘッドセットは、消費者向けtDCSデバイスの将来を占う上でとりわけ興味深いテストケースとなっている。
1つには、foc.usは全体的に、近未来デバイス風の雰囲気を漂わせる形に設計されている。250ドルの同ヘッドセット(医療機器として販売されているわけではないので、FDAの認可は受けていない)は0.8~2.0mAの電流を前頭前皮質に10~40分間流す(参考までに、120Vの電源に接続された100Wの電球は約830mAの電力を出力する。120Vは、tDCSデバイスの電源の推奨電圧の10倍以上に相当する)。
同社の主張によれば、foc.usを使用することで、より賢く、より速く、より優秀になるという。foc.usの力強いキャッチフレーズの中には、「脳をオーバークロックしよう」というものもある。
foc.usの創設者であるMichael Oxley氏は次のように述べた。「tDCSに関する科学的知見の現状を幅広く精査した。科学の世界では、1つ(あるいは少数)の研究や(研究が掲載された)出版物、あるいは1人(もしくは少数)の研究者の見解に基づいて結論が下されることはあまりない。当社は複数の学会関係者からいくつかの出発点を与えられ、そこから開発を進めていった」
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