ウェアラブルテクノロジによって、睡眠パターンの追跡が可能になるほか、目の上に道案内情報を表示することや、身に着けているもので心拍数を計測することが可能になる。しかし、ウェアラブルガジェットによって、頭の回転を速くしたり、一時的に頭をよくしたりすることはできるのだろうか。
実は可能である。しかし、そのためには脳を刺激する電極を頭に装着するしかない。「foc.us」ヘッドセットのようなデバイスはそのようにして機能する。foc.usは18歳以上のゲーマー向けに設計されており、先行予約を受け付けるウェブサイトが5月に開設されたときには、さまざまなメディアに大々的に取り上げられた。foc.usはこの種のデバイスの草分けであり、現在は最先端のマニア向け機能であるこのテクノロジをメインストリームに押し上げる可能性もある。
しかし、こうしたデバイスを日常的に頭に装着することがどれだけ安全なのかは分からない。科学者たちは今までこのテクノロジをテストしてきたが、主な目的はその効果を確かめることだった。また、この種の大量消費製品を開発することで全く新しい懸念が生まれる。医学界は慎重姿勢を崩していないが、消費者向け能力向上製品の将来がどのようなものになるのか、foc.usによってその答えを出さざるを得なくなるかもしれない。
その手法は経頭蓋直流刺激(transcranial direct current stimulation:tDCS)と呼ばれる。tDCSは脳を刺激する手法で、脳の各部分にごく微量の電流を流してさまざまな効果を得ようというものだ。従来は医療目的での利用に限定されており、最初の事例は1804年にまで遡る。最近の研究で、微弱な刺激は健康な脳に良い影響を与え得ることが分かった。例えば、foc.usデバイスのように前頭前皮質に刺激を与えると、学習能力やワーキングメモリ(作業記憶)が向上すると考えられている。一方、運動皮質を刺激すると、痛みのしきい値が上がり、利き手でない方の手が器用になる可能性があるという。
話がうますぎるように思えるが、実のところtDCSは短期的な使用であれば、副作用はあったとしても非常に少ないと広く考えられている。さらに痛みもない。研究によって実際に効果があることも分かっている。2012年にNeuroscience Lettersに掲載されたある研究報告によると、33人の被験者がtDCSを受けていない状態とtDCSを受けた状態で論理パズルに挑んだところ、tDCSを受けた被験者の40%はパズルを解いたが、tDCSを受けずにパズルを解けた被験者は1人もいなかったという。
tDCS愛好家のコミュニティーも盛り上がっている。YouTubeに投稿されたチュートリアル動画で説明されているように、自作の電極と市販の電池で脳への刺激を再現できることを考慮すると、それもうなずける。650ドルのtDCSデバイスを製造する企業Mind Aliveを所有するカナダ人男性のDave Siever氏は、tDCSに絶大な信頼を置いており、tDCSは同氏の音感を向上させただけでなく、抗うつの効能さえあると主張している。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」