アナログテレビ放送終了後の跡地をめぐる熾烈な周波数獲得競争を勝ち抜き、2012年4月に開局したスマートフォン向け放送サービス「NOTTV」。初年度は契約者数100万件を目指すも68万件に留まり、売上11億4000万円に対し営業損失が216億円に上るなど苦戦を強いられている。
とはいえ、まだスタートから1年数カ月の新しい放送サービス。ましてデジタル放送時代の周波数有効活用策と位置付けられたものを、そう簡単に諦めてしまうわけにはいかないだろう。そこでNOTTVを運営するmmbi取締役 経営企画部長の石川昌行氏と、常務取締役の和田行氏に、初年度の取り組みや今後の展望を聞いた。
石川氏:初年度68万件という結果については、確かに計画には到達していませんが、もともと高い数値を掲げていたことを考えれば評価できる数字だと思います。むしろ、よくここまで伸びたと。
石川氏:当初段階はスマートフォンとタブレットが1機種ずつしか対応しておらず、その後の伸びについても影響した部分はあります。実際、ドコモから対応新機種が発売されるごとに加入が伸びる傾向があり、こちらとしては早く対応機種を増やしてほしい、とやきもきさせられた面はありました。
石川氏:いわゆるツートップ(ドコモ夏モデルの「Xperia A」「GALAXY S4」)がNOTTV対応機種になるなど、明らかに状況は好転しました。6月末時点で加入件数は122万1344件にまでのぼっており、特に4月以降の伸びは顕著です。
石川氏:NOTTV対応機種の普及台数は3月末時点で約370台。現在では400万台以上になっているかと思います。6月末時点での契約件数が約122万件ですから、4分の1強が加入に結び付いていることになりますね。もちろん、一度加入されてから解約される方もいらっしゃるので、一概に数字を語ることはできませんが。
石川氏:当初から、5年後に対応機種が5000万台普及したとして、そこから1000万件程度の契約がとれれば十分というイメージはありました。それを踏まえると、開始直後の特需が過ぎて通常の普及パターンに近づいているといえます。最初からNOTTV目的で端末を購入するのではなく、選んだ端末がたまたまNOTTVに対応していたという形。こうした状況自体は否定するものではありません。
石川氏:一方で、ゼロからのブランド訴求の難しさは依然として抱えており、詳しい番組内容やNOTTVの魅力を伝えきれていないことが加入に結び付いていないことも事実です。そうした意味では、まだ安定、定着という段階ではないと考えます。
石川氏:通常のベンチャー企業であればありえない損失ですが、実際のところ、それほど想定から外れているというわけではありません。放送サービスは、黎明期といえどコンテンツの質を落としたら終わり。コンテンツ制作にコストがかかるのは当然であり、質を落として先々まで悪いイメージを持たれてしまうくらいならば、先行投資のつもりで品質を確保するのは当然の戦略です。
石川氏:すぐに黒字化というほど甘くはないでしょうが、少なくとも赤字が2倍、3倍に膨れ上がっていくということはありません。ここから先は、コンテンツに投じたコストを収入でカバーできる方向に持っていければいいと考えています。
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