「基本的に、それでストーリーの作業は完成だった。その時点で、すべてのシーンの制作を始めて良いことになった」(Mann氏)
Pixarでは、おそらくほかのどんなスタジオよりも、アニメーションが最重要視される。そのため「モンスターズ・ユニバーシティ」のスーパーバイジングアニメーターのScott Clark氏にとって、ラストスパートは、1年間くたくたになって行った制作作業の最後にやって来た。「一番疲れたのはそのころだ。ただ、自分が何を作っているかは分かっていた」(Clark氏)
そしてアニメーション化されたアセットが蓄積されるにつれて、時間はあっという間になくなっていき、壊れたモデルを修正する時間はほとんど残っていなかったとClark氏は語る。しかし結局、アニメーションをうまく動かすことが自分の仕事なので、いろいろ考えて試してみるための余裕は確保しておく必要があると同氏は言う。ただし最後の数カ月には、「締め切りがあるので、物事を試してみるのは最後の方では難しくなる」(Clark氏)
しかし本当に最後の段階になっても、それで「Pixar品質になる」のであれば、Clark氏は一部のショットを完全なものにする時間をアニメーターに与えなければならなかった。それは「数日間ではなく数週間」を選択的に与えるということだった。
しかし、どの作業をするか選ぶことが重要だったとClark氏は言う。それがシンプルなストーリーポイントであれば、時間をかけて考える価値はないだろう。「締め切りの良いところはそこだ。締め切りのおかげで、最も重要なことに集中せざるを得なくなる」
同じことは、映画の流れを正しくする作業にも当てはまった。同映画のスーパーバイジングテクニカルディレクターのSanjay Bakshi氏は、何よりも文脈が重要だと振り返る。全体的な文脈を知らなければ、どれほど見映えが良くても意味がない。「全体を通して見ると、文脈の外では気付けないようなことに気付く。だからこそわれわれは必ず、最終段階にいざというときのための予備(の時間)を取っておくようにしている。Pixar映画でそうしたことが起こらなかった映画はない。そしてその映画をより良くする作業に、われわれが『ノー』と言ったこともない」(Bakshi氏)
「モンスターズ・ユニバーシティ」を良くするためなら、どんなことにでも頭を悩ませてきたに違いない人物がScanlon氏だ。そして同氏が成功したかどうかを判断できるのは観客だけだ。
Scanlon氏にとって、この映画の完成(サウンドミキシングは除く)は、実際には3日早く、突然やって来た。同氏は当時このように語っている。「数週間の間、おかしな状況だった。われわれは非常に忙しく、同時に非常にまとまっていたからだ。それほど大人数のクルーがいて、突然すべてが終わった」
「最後のショットで終わりになった時、どうしたら良いのか誰にも分からなかった。奇妙な感じの拍手が起こり、それからわれわれは、まるで飛行機事故から生還したばかりといったように映写室から出た。どうして良いか誰も分からなかった」(Scanlon氏)
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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