そこでの作業の間、Scanlon氏は巨大なサウンドミキシングボードを備えた映写室に入って腰を下ろし、「着席した人々に囲まれて、カーク船長のように椅子の背にもたれる。正にエンタープライズ号のようだ」
Scanlon氏はSkywalkerで過ごすとき、腰を落ち着けて作業に取りかかる。そして、サウンドデザインによって「モンスターズ・ユニバーシティ」のストーリーをより効果的に伝えるため、Skywalker Soundの担当者の力を借りる。「自分が求めている点を伝える。そして、ほかのすべての人が自分の仕事をしっかりやってくれることを信じる」(Scanlon氏)
しかしSkywalkerで作業を締めくくるということは、実際の映画制作作業が完了したことを意味する。映画は配給できる状態になった。それは時としてつらいことでもある。「それは実際に、ある意味では気の滅入ることだ。映画を世界と共有できる日がすぐそこまで来ているのは胸の躍ることである。しかし、その移行期は驚くほど厳しいものだ。さまざまな人と一緒に働き、彼らはそこにいて自分をサポートしてくれる。そしてあっという間にほかのプロジェクトに移ってしまう。4年間続いた作業に幕を下ろす時が来たのだ。それは大学を卒業したときの感覚に近い」(Scanlon氏)
多くのさまざまな部門が4月の同じ日に最後の電球点灯式を迎えたものの、現実にはほとんどの部門が異なるスケジュールで動いていた。
「モンスターズ・ユニバーシティ」のプロデューサーのKori Rae氏にとって、この映画を仕上げることは多段階式のプロセスだった。それは、ある部門がこの映画の1つのセクションを完成させたとしても、単に次のセクションに進むだけだったからだ。そしてRae氏は、いつどんなことが起こってもうまく処理しなければならなかった。それは映画の完成直前でも変わらなかった。「ゴールに近づきつつあると最初に感じるのは、最初のリールを届けて、ショットが仕上がったことを知らせたら、そのショットを見ることはもう2度とないというときだ」(Rae氏)
しかしそのプロセスは遅く、順番は入り乱れていた。初めてプロデューサーを務めたRae氏は、次のように振り返る。「映画の一部を仕上げつつあっても、リールが届くのは4カ月から5カ月おきであるため、まだ作業の真っただ中だ。しかも、それはまだ最初の方のリールにあるストーリーかもしれない」
その時点で監督とプロデューサーは、進み具合の異なる複数のリールの様子を依然見ながら、下見用映像でショットの最後の仕上げをする一方で、編集での調整にさらに取り組んだりさえもするとRae氏は語る。あるいは同氏が「ユーモアチェック」と呼ぶ、「モンスターズ・ユニバーシティ」のようなコメディには重要な作業も行う。
ストーリーはもちろん、必然的に映画で最初に仕上げるべき要素の1つであり、アニメーションやサウンドよりもずっと前に仕上がっていなければならない。しかしこの映画のストーリースーパーバイザーであるKelsey Mann氏は、作業プロセスの最後に近づくまで、自分の仕事が終わりつつあるとは思えなかったという。同氏は、自分にとってのゴールラインが見えてきたのは「本当に大きな問題がなくなった時だった」と語る。「最後の方になって、アクト2に問題が見つかったのを覚えている。そして基本的には、その問題を解決してそれ以上大きな問題はないと気付いたときに、かなりの部分が終わったと分かった。そこから先は細かい作業になった」(Mann氏)
少なくともそれは、Mann氏とそのチームが、大きな疑問(そしてその答え)が何かということ、そしてこの映画の大きな方向性を理解したことを意味したと同氏は付け加えた。「そして映画の最初から最後まで、全体の方向性が分かってしまえば、話は簡単になる。それぞれのシーンのポイントは何か、そしてそれがストーリー全体にとってどんな役割を持つかが分かるからだ。どんな小さな決定でも、あらかじめ決めた大きな構造に基づいて行う必要がある。そうした構造を支える必要がある」(Mann氏)
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
「程よく明るい」照明がオフィスにもたらす
業務生産性の向上への意外な効果
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス