検閲は失敗に終わることの方が多い。フランス政府は現地時間4月7日、これを思い知ることになった。
Wikimedia Franceは6日午前、母体組織であるWikimedia Foundationが3月上旬にフランスの国内情報中央局(DCRI)から接触を受けたことをプレスリリースで明らかにした。Wikimedia Foundationは、人気オンライン百科事典「Wikipedia」を運営している。
DCRIはフランス語版Wikipediaに掲載された記事について、「機密扱いの軍事情報」を開示したことが同国の法律に違反するとして、同サイトから削除するよう求めた。
Wikipediaのこの記事は、フランスの軍事通信施設「Radio station military Pierre-sur-High」に関するもの。リヨンから70マイル(約113km)西にあるこの施設は、フランスの核抑止および核探知能力の一翼を担う施設と考えられている。
Wikimedia Foundationは、問題の記事に機密情報が含まれていることを証明する十分な情報をDCRIが提示していないことを理由に、この要求を拒否。顧問弁護士のMichelle Paulson氏は、同サイトのディスカッションスレッドで「これ以上の情報がないと、記事に含まれる情報が機密扱いであるとDCRIが考える理由を理解できない」と述べた。
Wikimedia Foundation側が記事の削除に応じなかったことに不満を抱いたDCRIは4月4日、フランス在住のあるWikipedia編集者を「召喚」。ページを削除しなければ告訴すること、そして、その結果は多額の罰金と長期の実刑判決にとどまらないと脅しをかけた。
プレスリリースによると、この編集者は問題の記事とは無関係で、DCRIに呼び出されるまではその記事の存在すら知らなかった。ただ、フランス国内でWikipediaやWikimedia関連の活動を頻繁に行っていたため、特定が容易だったのだという。
この編集者は「これはWikipediaのやり方ではない」と説明したが、Wikipediaの管理者用ツールにアクセスして同記事を削除することを強要された。
しかし、Wikimedia Foundationはその後数時間以内に、再びこのページを掲載した。同ページは、以前から何年にもわたって存在しており、最近になってフランス当局の注意を引いたにすぎない。
機密情報が含まれるとするDCRIの主張に反し、記事の内容はほとんど、Webなどで公開されている情報をまとめたものだという。
法的手続きを経ずに、記事に関わっていないWikipedia編集者に記事の削除を強要するというこの企てに対し、この編集者は透明性のあるアプローチを採り、記事を非公開とした理由を明らかにした。
同氏の行動を説明するスレッドに多くの人が反応した。同氏は客観的事実のみを約75語で述べただけで、それ以外はコミュニティの人々によるものだ。人々はDCRIに対して疑問を呈し糾弾している。これにより、かつて公に知られていたことを隠そうとするDCRIの企てがさらに暴かれることとなった。
たった数時間のうちに、問題の記事はWikipedia Franceで一番の人気記事となった。WikipediaページをモニタリングしているWikiscanによると、この記事は6日だけで4万7000回閲覧され、55人の編集者による145回の修正が加えられたという。
情報を隠そうとして、結局は余計に知れわたってしまったというわけだ。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)
ZDNET×マイクロソフトが贈る特別企画
今、必要な戦略的セキュリティとガバナンス
ものづくりの革新と社会課題の解決
ニコンが描く「人と機械が共創する社会」