今さら昔のこと(について書かれたエッセイ)を思い出したのには理由がある。
先週発表されたサムスンのGALAXY S4(GS4)、そしてあの発表を巡ってあったちょっとした騒動で、テールフィンのついた米国車の時代のことを想い出したからだった。(註7)
ブロードウェイ・ミュージカル仕立てのGS4発表会については、すでに一度CNET Japanに書いた(編註:三国大洋氏の連載はZDNet Japanにまとまっている)。あの演出について、まるで50年代のテレビのホームドラマを彷彿とさせるような男女の描かれ方が「時代錯誤なステレオタイプ」だといって、米CNETのエグゼクティブ・エディターであるMolly Wood氏が噛みついた(註8)。
そのWood氏の話を枕に独自取材も加えて書かれたThe Vergeは、サムスンが起用したスタッフに昨年トニー賞を受賞したばかりの舞台監督、そしてAdam SandlerやDrew Barrymoreが出演する映画(現在撮影中)に作品を提供した脚本家もおり、舞台演出にあたらせていた、などと書いている。もっとも、細かな部分まで逐一、ソウル本社にお伺いを立てなくてはならなかったようだ。(註9)
私が最も気になったのは、そんな凝った演出でもなく、ましてや男女の描かれ方でもなく、そこまでしてアピールされたさまざまな機能の大半が、かつてのアメ車にみられた豪勢なテールフィンやラジエータグリルに相当するのではないか、ということだった。
昨年秋のiPhone 5発表のとき、iPhone 5は「まったく退屈な代物」と書いたWIREDのMat Honan氏は、今回も同様に「GS4はケチの付けようがないほど素晴らしく同時にまったく退屈」などと書いている。(註10)
退屈かどうかは無論受けとめる人次第だろうが、それでも「以前は新機種が発表される度にとても革新的ものが含まれていた。ところが、今ではどれも漸進的な向上としか感じられなくなっている」というHonan氏の指摘——「revolution becomes evolution.」には、傾聴に価する部分があるだろう。
また、「今、本当にワクワクするような新しいガジェットは、もはやスマートフォンではなく別の分野で姿を現しつつある。グーグルの『Glass』しかり、アップルで開発中と噂の『iWatch』しかり……」という指摘も、まったく仰せの通りと思えてしまう。
すれっからしのテクノロジ系ライターの感じ方と一般消費者の感じ方には開きがある。そう前提すると、GS4という製品も、膨大な額の宣伝費や販促費という後押しを受けながら前機種を上回る大ヒット商品という結果になるのだろう。けれども「人の行動を変え得るようなモノ」という点については、話はまた別となるのかもしれない。
サムスンはまだAppleなどの他社を真似することしかできていないため、現時点では本当に新しいものを作り出すことをあまり期待できそうにない。また、ポケットに入る小型コンピュータで携帯電話機市場をひっくり返したアップルにしても、かつてのような破竹の勢いは感じられない……。(註11)
「そうした本当に新しいものが、どこから出てくることになりそうか」
そんなとりとめのないことを想い浮かべながら、あらためてThink Differentのビデオを眺めている。
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