ブックレビュー200回記念--選りすぐりの3冊を紹介

 毎週1冊の本を紹介している「ブックレビュー」のコーナーも、早いもので5年目に突入した。連番こそ付いていないが、連載回数は200回を迎えた。これもひとえに、素晴らしい本を世に送り出してくださった著者や出版社の方々と、ブックレビューを読んでくださる方々のおかげだ。毎日、数え切れないほどの本が出版されている中、毎週1冊のみを選ぶのは、相変わらず難しい。100回記念の記事でも書いたことだが、200回を迎えてもそれは変わらない。そして、今後もきっと、多くの良書の中で苦悩しつつ今週の1冊を選んでいくのだろう。

 そのように苦労して選んできた200冊だが、今回は200回突破を記念し、4年間に紹介した本の中から、筆者自身が強く感銘を受けた3冊を厳選し、改めて紹介したい。

理解の深さが分かりやすさにつながる--「わかりやすく<伝える>技術」


「わかりやすく<伝える>技術」

 1冊目は、池上彰氏の「わかりやすく<伝える>技術」。池上氏の説明がとても分かりやすいことは、みなさんもよくご存じだろう。なぜ分かりやすいのか、どうすれば分かりやすくなるのかが、ここまで具体的に細かく分かりやすく書かれている本はあまりない。

 上司に状況を報告したり、顧客に対して自社のサービスについてプレゼンしたり、ビジネスパーソンは毎日何かについて説明しているといってもいい。池上氏がテレビの仕事を通じて学んだ説明の技術は、今や、ビジネスパーソンが必ず習得すべき技術でもあるのではないか。聞き手あっての説明である、ということを説明する側は忘れがちだ。凝ったスライドをいくら作っても、長時間の説明をがんばっても、相手が理解してくれなかったら何の意味もない。

 かく言う筆者も、文章を書いたり、文章の書き方を教えたりしている者の端くれとして、「わかりやすく」伝えることについて、ある程度心得ているつもりであった。しかし、本書を読み終えたときには、ガツンと頭を殴られたような衝撃を受けた。「自分がそのことを本当によく知っていないと、わかりやすく説明できないのです」「よく理解していれば、わかりやすく説明できる」これは常々、実感していたことではあるが、自分の至らなさを思い出させてくれた。

仕事のやり方を見直す--「ひとつ上のGTD」


「はじめてのGTD ストレスフリーの整理術」

 2冊目は、デビッド・アレン氏の「ひとつ上のGTD ストレスフリーの整理術実践編」。タスク処理システムであるGTD(Getting Things Done)の発案者の本である。GTDの入門書は「はじめてのGTD ストレスフリーの整理術」であるが、実践編を選んだのには訳がある。GTDなら、自分の仕事のやり方を整理できると思って入門書を読んだが、いろいろな点が抽象的で、一人で実践するのは難しいと感じた。しかし実践編のおかげで具体的なやり方が分かり、その後の自分の仕事の進め方を大きく変えることができたからだ。

 GTDを実践すると、仕事でもプライベートでも、もやもやとした「気になること」を「次にとるべき行動」につなげ、見通しを立てられるようになる。見通しが立つことで今後の不安が解消され、今やるべきことに集中できる。頭の片隅で、気になることを常に考えていなくてもよくなり、まるで重い鎖から解き放たれたようであった。現在は、GTDのルールに厳密に従ってタスクを管理しているわけではないが、GTDの概念のおかげで、自分に合ったやり方を工夫できるようになった。

圧倒的なノート応用法--「モレスキン『伝説のノート』活用術」


「モレスキン『伝説のノート』活用術」

 3冊目は「モレスキン『伝説のノート』活用術」。モレスキンというノートのさまざまな使い方を提案している本である。モレスキンへの愛にあふれた一冊ではあるが、シールやはんこを使ったカスタマイズの方法や、GTDシステムの実行方法などは、どのようなノートでもそのまま応用できる内容だ。

 しかし、モレスキンだからこその楽しみは多い。豊富なラインアップの中から、自分好みのモレスキンを探したり、堅牢性を活かして一生残しておきたい記録をつけたり、活用の場は枚挙に暇がない。

 筆者は本書に紹介されている文房具に惹かれて、自分でも文房具を集めたり探したりするようになった。さらには、モレスキン以外のノートやメモ帳にも興味の幅が広がり、今では家の中がノートだらけとなった。文字を書く時間がぐっと増え、手書きの良さを再認識した。本書が筆者のライフスタイルの一部を変えたと言っても過言ではない。

 上記の3冊は、筆者の仕事や人生を「少し」変えるきっかけとなった。1冊ごとの影響の大きさは、その時には見えなかったが、こうして改めて3冊を並べて振り返ってみると、それぞれの本との出会いによって、現在の自分が、いかに大きく影響を受けていたかが分かる。同じように、ブックレビューで紹介する本たちが、読者のみなさんの何かのきっかけになるとしたら、これほどうれしいことはない。

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