サムスンにとって、GALAXY S IVはどれほど重要なのだろうか。簡潔に言うと、「極めて重要」だ。
確かに、サムスンはライバルのAppleのように、毎年たった1つの新型携帯電話を販売しているわけではない。確かに、ファブレット(電話とタブレットの中間的なデバイス)として知られるサムスンの巨大スマートフォンシリーズ「GALAXY Note」は、好評を博している。確かに、サムスンはタブレットやテレビ、冷蔵庫も製造しており、もちろん、それらの製品で使われる部品の多くも作っている。
しかし、同社の事業がそれほど広範だとしても、GALAXY S IVは非常に多くのものを背負っている。携帯端末ベンダーにとって企業の名声と評判を形作るのはハイエンド携帯電話だ。ハイエンド携帯電話は人々に話題を提供し、憧れの対象を与える。
ハイエンド携帯電話は、企業が手に持って掲げ、「これは私たちの革新の象徴だ。もしこれが気に入ったら、当社のほかの製品も試してほしい」と言うことができるデバイスだ。利益の大半をもたらすのも、ローエンドのマスマーケット向け携帯電話ではなく、ハイエンド携帯電話だ。
Current AnalysisのアナリストであるAvi Greengart氏は、「サムスンがこれを正しく認識することは非常に重要だ。彼らはGALAXY S IIIを発展させることを望んでいる。惰性で進んだり、後戻りしたりすることは望んでいない」と述べた。
米CNETが以前指摘したように、Appleとサムスンが最も革新的だった日々は過去のものになっており、業界最大手の両社もついに、市場のほかの企業を苦しめてきた競争の圧力と厳しいビジネス環境に屈しようとしている、という懸念が拡大している。両社は先般、記録的な四半期決算を発表したが、それは市場を満足させるには十分でなかった。
テクノロジ関連のメディアやアナリストのメモを読むとそうは思えないかもしれないが、iPhone 5は大失敗ではない。iPhone 5に関するレビューは概ね好意的で、販売台数も好調さを維持している。Strategy Analyticsによると、iPhone 5は2012年第4四半期、GALAXY S IIIを抜いて世界で最も売れたスマートフォンになったという。しかし、Appleは同デバイスに関していまだに批判を受けている。そして同デバイスの発売以来、Appleはかつての鋭さを失いつつあるとの懸念が広まっている。
AppleがiPhone 5で犯した過ち(少なくとも、テクノロジ分野の人々が言うところの過ち)は、同デバイスに真に思い切った変更を追加しなかった上に、搭載OSにも本当の意味でのアップデートを施さなかったことだ。サムスンがGALAXY S IVに十分な数の新機能を搭載しなかった、と主張するのは難しいが(同デバイスには消費者が絶対に使いこなせないほど多くの機能が搭載されている)、端末自体の見た目はGALAXY S IIIとそれほど変わらない。人々がサムスンの革新の力を疑う日が訪れるであろうことは、想像に難くない。彼らはAppleに対して既にそうしている。
GALAXY S IVがテクノロジファンに好意的に受け入れられなかったとしても、サムスンが破滅するわけではない。それどころか、GALAXY S IVはどのみち好調に販売台数を伸ばす可能性が高い。しかしサムスンの革新が鈍化しているという印象は、将来世代のGALAXY S携帯電話によって広がるかもしれない最初の亀裂を表しているのかもしれない。人々はGALAXY S IVを買うかもしれないが、「GALAXY S V」や「GALAXY S VI」が発売されたときには、もう購入しないかもしれない。
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