「ドリパス」を運営するブルームは3月11日、同社の全株をヤフーが取得し、ヤフー傘下となったことを明らかにした。買収額は非公開だが、数億円とみられる。
ブルームは、Open Network Lab(Onlab)のインキュベーションプログラム第4期に採択されたスタートアップ。代表取締役の五十嵐壮太郎氏は、新卒で入社した博報堂で営業職に就くかたわら、HIPHOPユニット「リーマンマイク」のメンバーとしてメジャーデビューも果たし、退職後にOnlabに採択されたという経歴を持つ。
同社が提供するドリパスは、ユーザーからのリクエストをもとに、リクエストの多い映画を映画館で上映するというもの。「たとえば『スタンド・バイ・ミー』を映画館で観たいと言われても、映画館からすれば観客が入るかどうかも分からず、リスクが高い。事前に一定数のユーザーを集めることで映画館のリスクを分散できる。ギャザリングと同じようなもの」(五十嵐氏)
2010年8月には、東京・新宿の「新宿バルト9」などのシネマコンプレックスを展開するティ・ジョイと組み、サービスを展開。現在は全国76の映画館と提携するに至っている。テレビの編成枠同様、ブルームが劇場の編成枠を一部預かった上で、ユーザーの投票が一定数に達した場合に映画の権利者と交渉し、その枠で映画を上映しているという。
これまでプロモーションをほとんど実施していないというドリパスだが、会員は2万5000人。毎月10回ほどの上映を実施しており、1日で約1600人を動員するイベントも実現した。「ITベンチャーに見えるが、非常にリアルに根付いたサービス」(五十嵐氏)
しかし一方で、ノンプロモーションでの成長も鈍化しており、次の一手を模索していたという。そんな中で、エンターテインメント領域でのO2O事業の強化を検討していたヤフーとの話し合いが始まったという。
「このディールは、ドリパスの事業やそのユーザーにとってどういう選択肢がいいかという視点のみ(で決断した)。『IPOまで頑張る』『2けた億円以上でないと売らない』といったことは考えなかった」(五十嵐氏)。今後ブルームはヤフーに統合される予定だが、ドリパスはサービス名などを変更せずに運営を続けるという。
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