4月に役員を一新した新体制を発表して以降、スローガンに掲げる「爆速」ぶりを次々と見せつけているヤフー。クックパッドやカカクコムの「食べログ」、nanapiなどとの提携を発表したほか、クロコスやコミュニティファクトリーの買収、さらには主力サービスの強化や新サービスの提供を発表するなど、その勢いはとどまることを知らない。
外からそのように見えるヤフーだが、実際には順調なのだろうか。今後どこに向かうのか。副社長兼最高執行責任者でメディアサービスカンパニー担当執行役員の川邊健太郎氏に聞いた。
新たな執行部の平均年齢は44歳。構造的には今までより10歳若返りました。第2の創業としてどういう姿を目指すか考えました。ここ数年を振り返ると、ヤフーの利益は前期比3~5%増といった数字で推移していました。
数%とは言え、15期連続で増収増益を続けており、それはそれですごいことです。しかし周囲を見渡すとGoogleやApple、Facebookにグリーやディー・エヌ・エー(DeNA)などが2けた成長を続けています。振り返って我々も「2けた成長に戻す、もっと便利に利用してもらえるサービスになろう」になりました。そんな中で「課題解決エンジン、利益2倍」といったキーワードが出てきました。
それを実現するために考えたのが「強いものをより強くしよう」という事でした。孫さん(孫正義氏)も孫子の兵法にある「勝ち易きに勝つ」ということをよく言いますが、Yahoo! JAPANのトップページやYahoo!ニュース、Yahoo!オークション、Yahoo!知恵袋など、もともと強みとなっているサービスは圧倒的に勝っていこうとなりました。
そこから一方で、「勝てないものについては他社と一緒にやっていく」と考えるようになりました。以前に(米Yahoo!の共同創業者である)Jerry Yangが話していたのですが、Yahoo!を始めた当初、検索ワードからユーザーのニーズが分かるので、そのニーズにあったサイトを検索エンジンに登録していこうとしていたそうです。しかし、その頃あったのはパソコン通信の延長線上のテキストサイトばかり。インターネットの文脈で自らサービスを作ろうとなって出来上がったのが今のYahoo!なのです。
しかしそこから15、6年経ちました。我々が作った使いやすいサービスもあるものの、卓越した外部の人たちが作るサービスの方が優れているということも出てきました。たとえばSNSの「Yahoo! Days」より「Facebook」の方が使い勝手がよくなり、レシピ共有サービスでは「Yahoo!レシピ」と「クックパッド」ではサービスに差がついていました(編集部注:Yahoo! Days、Yahoo! レシピはいずれもサービスを終了している)。こういった我々の強くないところは提携していこうということです。
また、強いものをますます強くするということも大事です。スマートフォン時代が到来しても、やはりポータルは必要とされています。これはデータから確信が持てるようになりました。特にスマートフォンの初心者が増えればその傾向はさらに強くなる。結局はYahoo! JAPANのトップが見られるのです。
お客さんにとってヤフーの価値は何かと考えると「起点」であることです。起点となるサービスは我々がちゃんとやっていきます。
こういう背景をお話しすると今までやってきたことがはっきりすると思います。クックパッドも食べログも、我々が強くなかった分野です。買収したクロコスの得意とするソーシャルは、ヤフーがあまり強くないところ。コミュニティファクトリーについても「DECOPIC」という起点になる写真サービスを持っていました。
ヤフーは自分たちでこの数年やり過ぎていたところがあると思うんです。今は自分たちがますます強くなること、必ずしも強くないところを提携するということ、どちらももっと外と話をしていこう、千客万来であらゆるところとやっていこうと考えています。以前のヤフーはあらゆるネットの相談所になっていたのに、いつからかそれが来なくなってしまっていました。
結論から言うと、早いうちにお互いが味方と思えるようになっておいた方が、お互いにとっていいということですね。
nanapiとの提携もその例だと思います。単体の悩みに対する課題解決にはYahoo!知恵袋がいいですが、悩みに対して答えをまとめた形で提供するということは知恵袋では今までやっていませんでしたし、それこそがnanapiの強みです。
nanapiの件で言うと、「NAVERまとめ」を見誤ったところがあります。正直あそこまで伸びるとは思っていませんでした。我々もあとになって「Yahoo!くくる」を作りましたが、やはりうまくいきませんでした。
また、我々はトラフィックに加えて収益をレベニューシェアして提供できますし、一方で我々は顧客満足度を高めることができます。これはスタートアップが「ヤフーって何なんだろう」と思うことに対する解決策の1つだと思います。
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