クックパッドが提案する“農家と消費者”をつなぐ流通の新たな形

藤井涼 (編集部)2013年02月08日 16時30分
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 国内最大級のレシピサイトを運営するクックパッド。同社は2012年7月から野菜の定期宅配サービス「やさい便」を提供している。といっても、クックパッドが自社で食材を販売する訳ではなく、ユーザーと農家が野菜を売買できる“マーケットプレイス”としての場を提供するものだ。

 このサービスの特徴は、小規模な農家でも気軽に出店できること。生産可能な範囲で野菜を売買できるため、これまでは生産量が少なく既存の市場に参入できなかった農家も、PCひとつで全国の消費者に野菜を販売できるようになる。複数の農家がそれぞれの野菜を持ち寄って1件の店舗として出店することも可能だという。

  • クックパッド フーズマーケット事業部 部長の保田朋哉氏

 「従来の経済規模を求める流通では多様性は失われていくが、ネットはその逆。1日5箱しか出荷できない人でもニーズさえあれば売れるし、そういうところの方が美味しい食材があったりする。既存の流通には乗りづらい、けれど美味しいというものを誰でも買えるプラットフォームにしたい」――そう語るのはクックパッド フーズマーケット事業部 部長の保田朋哉氏だ。

 現在はやさい便のスタッフが各地へ出向いて出店する農家を募っており、サービス開始から約半年で店舗数は50を超えているという。保田氏は「相手が高齢者の方でも若い事務方につなげてくれることが多い。また、農家の方の作業も毎週1回野菜のリストを登録するだけで、あとは運送会社が受け取りにきてくれるので負担も軽い」と敷居の低さをアピールする。

届く野菜は「農家にお任せ」

 ユーザーはやさい便のサイト上で、野菜の種類や産地などから農家を選択して申し込む。あとは毎週または隔週のペースで野菜のセットが送られてくるのを待つだけだ。価格は1680円と2680円の2種類が用意されており、これに別途送料がかかる。少し高めの印象を受けるが、中間マージンが発生せずユーザーと農家が直接売買できるため「スーパーなどで買うよりも価格は安い」(保田氏)という。

 野菜の組み合わせはすべて農家に任せる。たとえば、2月8日時点で人気ランキング1位の「倉敷きのこ園」の野菜は、生しいたけ、プチ生シイタケ、ブナシメジ、エノキ茸、キャベツ、千両茄子、サラダほうれん草、ほうれん草(加熱用)、白菜、きゅうり、九条ネギがセットになっており、キノコを中心としたさまざまな野菜を楽しめる。

  • 送られてくる野菜セットのイメージ

 個別ではなく、あえてセット販売にしたことについて、保田氏は「いきつけのお寿司屋にいって、旬の美味しい魚をお任せするのと同じ。食材を一番知っているプロに任せれば美味しいものが食べられるのではないかと考えた」と説明する。農家によっては週ごとに野菜のセット内容が変わるため、季節ごとの旬な野菜を味わえる。ユーザー自身もサイト内のボタンで自由に購入先を切り替えられるため、同じ野菜ばかりで飽きてしまうことも防げるという。

 さらに、クックパッドならではの強みとして、やさい便のユーザーは届いた野菜の人気レシピをサイト上で無料(通常は月額294円のプレミアムサービスで提供)で閲覧できる。これによって日ごろ買わないような野菜が含まれていても調理方法に困らずに済む。「子どものころの学研の工作キッドに近い感覚。送られてきた野菜と一緒にレシピが入っていて、作っていくうちにいろいろな野菜を料理できるようになる。多くの主婦が抱えている献立のマンネリ化も解消できる」(保田氏)。

 現在は野菜のみだが、ゆくゆくはすべての食材を取り扱っていきたいと保田氏は語る。「野菜は一番基礎の毎日使う食材であり、かつ腐りやすいという難しさもある。そこで知見をためれば横展開も比較的やりやすい。たとえば米などは定期便に向いている。また街の魚屋も減っていて、鮮度のいい魚が買えないという声を聞くので、この領域にもチャンスがあると思っている」(保田氏)。

やさい便は生活習慣を変えるサービス

  • 「やさい便」のトップページ

 同社によると、2013年に入ってからやさい便の1日あたりの登録ユーザー数は2012年末の約5倍に増加。また月単位では12月と比べて1月の登録ユーザー数が約5割増加しているという。その理由について保田氏は「年始に入って『今年こそは健康に気をつかった食生活にしよう』と高い意識を持った人が一時的に増えたのではないか」と分析する。

 やさい便では定期的に食材が送られてくるため、人によっては生活習慣を変えなければならない。そのため、引っ越しや結婚、出産など、何か大きなきっかけがなければ、実際に利用されるまでにはいたらないのが現状の課題だ。同社ではこれまで、サービスの品質向上に注力してきたが「今後は実際に購入したユーザーがバイラルしてくれる仕組みづくりも考えていきたい」(保田氏)という。

 またクックパッドは現在、広告事業と会員事業を収益の2本柱としている。保田氏は「クックパッドが食のプラットフォームを目指す上で間違いなく必要になるのが食材の販売。方向性はいろいろあると思うが必ず大きな事業にしていきたい」と語り、将来的には食材宅配サービスを主力事業と同等の規模まで成長させたいと意気込んだ。

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