2013年の展望

セガネットワークスの2013年--ベンチャー精神注入で差別化を加速 - (page 2)

 ポケラボさんとの協業は非常にうまくいった例のひとつだと思います。「運命のクランバトル」では制作チームの半数に該当する弊社のスタッフを送りました。ポケラボさんはソーシャルゲームにおけるマネタイズのノウハウや課金戦略長けていると思います。一方、セガネットワークスはこれまでの経験からプログラミングやアート、グラフィックにおける能力に長けていると思います。お互いを認め合っていい化学反応が起きたのが「運命のクランバトル」だと考えています。ポケラボさんはグリーさんのグループに入られましたが、弊社には無いスキルセットを持った企業なので、今後に関しても合弁会社を作り、新たな協業タイトルを戦略的に仕掛けていきます。

 f4samuraiさんとの包括的業務提携も同様で、ベンチャー企業と組むことで、彼らの持つソーシャルゲームにおける強みとスピード感に、我々の持つ強みやノウハウを送り込み、魅力あるタイトルを提供していきたいと考えています。現段階で公表しているのはこの2社ですが、他にも数社協議を進めているところもあり、両社にとって有益であると判断されれば、今後も戦略的に協業というビジネスモデルを展開していきたいと考えています。

 協業させていただく際に期待すること、狙いは、半歩先をいくタイトルを素早く制作してリリースする体制を作ることです。もちろん弊社でも独自開発によるタイトルをリリースしていきますが、そちらではさらにその先を見据えた1歩先、2歩先のタイトルをしっかりと作りこんでいきたいと思います。マーケットのトレンドは3、4カ月で違うヒット作が出ている状態ですので、流れの速いものを彼らのスピード感で作って行きたいと考えています。

――この1年の動向を見るに、予想外だった出来事や事柄はありますか。

 いい意味で予想外だったのは、米国で日本のソーシャルカードゲームが受け入れられたことです。「Rage of Bahamut」(日本名「神撃のバハムート」)が扉を開けたというのは、我々にとって光明でしたし、ビジネスチャンスが広がったと思います。

 欧米の開発会社には「日本の市場は特別だから」という風潮が強かったように思います。Zyngaが上場するまでは「人数を集めているゲームが一番偉い」と見られていましたが、「稼いでいるゲームが偉い」という概念に変わってきました。そしてやはり日本のゲームはすごいという風潮に変わりつつあったタイミングでヒット作が出たのは、欧米において絶好のタイミングだったようです。今では海外のメーカーが日本のゲームをかなり研究して、似たようなゲームを作り出しています。

――海外展開も考えられていると思いますが、注力する地域はどこでしょうか。

 現時点では日本を最優先に考えていますが、注目しているのは文化が似ている韓国です。カカオトークを中心にライトゲームが強い市場ですが、もともとオンラインゲーム先進国ですし、PCオンラインゲームのメーカーもスマートフォン向けにハイエンドゲームを作り始めてます。日本と同じようなマーケット状況になりつつあるというのが肌感覚としてあるので、我々のハイエンドゲームを展開すれば受け入れられる可能性を強く感じています。

 また、欧米はマーケット規模が格段に大きいので当然考えています。日本からタイトルを持っていき、現地で運営して成功に導くというものと、現地のスタッフが現地のマーケット向けに作ったゲームの2面作戦で開拓していきます。もちろんこちらもすでに複数タイトルの開発が進んでいます。

――2013年に向けて、スマートデバイス向けのゲーム市場がどのように動くか、またどのようなゲームがトレンドになると考えていますか。

 まず私が注目しているのは、テクノロジーの進化です。これはゲームに限らずIT業界やその他の分野も含めて、どんなテクノロジーが生まれてくるのか常に注視しています。デバイスの進化も急激に進んでいくことでしょうし、直近ではLTEの本格的な普及や、スマートテレビやクラウドゲームの普及に伴って、コンテンツをダウンロードするという文化がなくなるかもしれないなど、マクロな視点であらゆる動向に注視し、そしていざそうなったとき、ミクロな視点として日々のビジネスにどう影響するかを読み取っていくことが重要だと考えます。

 ヒット作のトレンドについては、この業界は3、4カ月に一回変わっています。昨今隆盛のカードバトルからの進化系もあれば、全く新しいジャンルも含めて常に大きな変化が起こり続けています。「来年は」ということに限ると、今ヒットしているタイトルや人気が出そうなジャンルにプラスアルファをしたものだと思います。半歩先の正解はビジネスで言うマーケットインに基づいた戦略だと思います。

 ですが、セガの強みはプロダクトアウトです。お客さんが考えもしなかったようなものを出すことでイノベーションは起きます。振り返るとiPhoneが出るまでは、誰もタッチパネルの携帯電話がほしいと思わなかったはずです。最初のイノベーションは、ユーザー様が欲しいとは思えない、予想していないものを出して、それをほしいと思わせる技術です。そしてそれこそ、セガがこれまで得意としてきたことです。

「デーモントライヴ」
「デーモントライヴ」
(C) SEGA/(C) SEGA Networks

 今冬に「デーモントライヴ」というタイトルのリリースを予定していますが、思うにかなり先鋭的なチャレンジタイトルで、今現在同じようなジャンルのゲームはスマートデバイス向けにサービスされていないと思われます。すぐに皆さんにご支持いただけるかはわかりませんが、ユーザー様はこういったタイトルを求めているはずだ、と自信を持てる内容になっていますので注目してください。

 直近のこともそうですが、すでに再来年、2014年にも目線を向けています。あまりにマーケットの動きが早すぎてそこまで考えている会社さんは少ないと思いますし、今の時点では2歩先、3歩先なものかもしれませんが、先を見据えて仕込んでおけばリリース時に半歩先のタイトルとなりますので。

――デバイスやテクノロジーの急速な進化にともなう開発費の高騰、そして競争の激化が予測できるかと思いますが、そこで生き残るために必要なことはなんでしょうか。

 すでに開発費の高騰が起きており、来年はさらに高騰し、競争が激化することは間違いないでしょう。そうなると勝者と敗者の選別がさらに進むでしょうし、プラットフォームにおける勝者というのが目まぐるしく変わっていくかと思います。特に米国では、3カ月ごとにナンバーワンと呼べる会社が変わっています。今年も見受けられましたが、会社の合併や統合、買収という形で、ある種のグループ化もかなり進むでしょう。その最大の要因は開発費の高騰にあります。もちろんコンシューマなどのゲームビジネスをやってきた我々にとっては、何度も経験してきた道です。

 そこでセガネットワークスとしてとるべき戦略と姿勢は、差別化に注力することです。差別化してお客様に受け入れていただけるゲームを作ることに特化した会社ですし、まだまだチャンスはあると考えています。私はどんな業界でも勝ち組は2種類しかいないと思っています。ひとつは差別化できている会社。もうひとつは、圧倒的なコストリーダーシップを有している会社、つまり、安価での商売をできる会社と言い換えてもいいかもしれません。これ以外の会社は、どの業界を見ても利益は出せていないと思います。

 もちろん我々としても、今の段階で差別化できているかと言われるとまだまだ足りないと感じています。2年前に「キングダムコンクエスト」が出たような、ジャンルを切り開くゲームを何本も出していかないといけません。年末に出したタイトルは、その序章というべきタイトルではありつつも、マーケットトレンドにあわせたタイトルですので、インパクトを生み出すタイトルというのはこれからです。来年にはやっぱりセガは一味違うと思っていただけるタイトルを出せると思います。仕込んでいるものはたくさんありますが、世に出ないものもあるでしょうし、逆に早急に作り出すものもあるかと思います。数についてはっきりとは言えないですが、来年中に最低でも10本以上のハイエンドなゲームが送り出せると思います。また、これとは別にソーシャルゲームや協業タイトルも複数ありますので、かなりの数をリリースできると思います。

 コンシューマー、アーケード、オンラインゲームなどのIPをスマートフォンで積極的に展開していくことも考えています。オリジナルのファンが納得するクオリティであるのは当然ですが、アーケードゲームとの連動も仕掛けていきます。タイトル単体のクオリティだけではなく、O2Oというオンラインとオフラインでの連携施策は、アーケードゲーム開発と店舗運営も行っているセガにしかできない大きな差別化のひとつでもあります。

 セガに期待していただいている方が多いことは感じています。過去の歴史を振り返ると、その期待に十分応え切れなかったことも認識しています。期待に応える上で重要なのは「期待に応える」だけではダメで、「期待以上のこと」をしないとユーザー様には驚いていただけません。レビューでも期待通りだと星4つでしょう。期待以上じゃないと星5つはつけていただけません。ファイブスターを取りに行くのが我々の使命ですし、そのためにもクオリティには徹底的にこだわっていきます。これからのセガネットワークスに期待していただきたいと思いますし、その期待を上回っていきたいと思います。

CNET Japanの記事を毎朝メールでまとめ読み(無料)

-PR-企画特集

このサイトでは、利用状況の把握や広告配信などのために、Cookieなどを使用してアクセスデータを取得・利用しています。 これ以降ページを遷移した場合、Cookieなどの設定や使用に同意したことになります。
Cookieなどの設定や使用の詳細、オプトアウトについては詳細をご覧ください。
[ 閉じる ]