次に人気が高く流行ることでダウンロード数が多いものが儲かるものかどうかを検証した。調査期間は2012年1月~11月とし、儲けの中心がゲームであることからゲームカテゴリについて調査した。ゲームカテゴリに属するアプリがダウンロードランキング1位だったのはiPhone有料アプリで23.9%、無料アプリで39.4%だった。特に連続で1位だった日数は11日~6日前後が最高クラスで、有料無料共に6~8タイトルだった。
Androidでは有料アプリの1位は約62%の日数が「押忍!番長2」1タイトルで占められ、逆に無料アプリではゲームが1位を獲得した日は3%しかなかった。しかし、売上ランキングでは常に上位にゲームアプリが多数存在し、儲けていることがわかっている。
このことから、一般的にヒットと呼ばれる状態、すなわち「人気があり多数売れているもの」が「儲かったもの」ではないことが読み取れる。つまり一定数のダウンロードを確保し離脱率を低めて一人当たりの課金率を上げることで儲けるのだ。一部の熱狂的なファンの心をつかみ取り、その中で儲けるビジネスとも言える。これは大量消費型の購買行動に根ざしたものではなく、例えば、今年1度も新曲を出していないにも関わらず、コンサートツアーに数万人以上を動員できるアーティストのようなものだ。つまりこの分野が成熟化された市場構成になったことを意味するのではないだろうか。さらに言えば一部の人々に熱狂的に支持されるニッチ市場が形成されたのだ。
今年のスマホアプリ・ビジネスは儲けるための作戦として、ある程度の数の熱狂的ファン層が存在するニッチ分野での顧客開拓による儲けの型が見え、それを実現するためコンテンツの作り込みと、集客手法としての広告やバイラルマーケティングなどのプロモーション手法がほぼ確立されたと言える。
プロモーション手法として、直近で急速に集客しているアプリを例に見ていこう。「対戦☆ズーキーパー」だ。このアプリはAndroid無料アプリで2012年11月19日にリリースされ11月26日には無料ランキング100以内に入り12月9日には10位を獲得している。リリースと同時に多くのメディアで取り上げられ、Twitterを通じてバイラルが拡大しダウンロードランキングも上昇していく典型的なパターンだ。
この図では左側がTwitter内でAndroid無料アプリに関してつぶやかれた中で「対戦☆ズーキーパー」に関してつぶやかれたものが全体の何位だったかを示すものと、右側がAndroid無料総合ランキングの推移を示すものだ。リリース翌日の11月20日には7つのウェブ媒体(中段グラフ「Media & Blog」)で記事が取り上げられ、Tweet(下段グラフ、左は1時間単位、右は1日単位)も毎日上昇傾向にある事が分かる。リリース翌日にはTwitter中のAndroid無料アプリに関するつぶやきでは1位になっている。
ズーキーパーという有名なゲームタイトルだからリリースと同時にバイラルが発生して流行ったのだと単純に考えてはいけない。アプリそのものにバイラルが発生する仕組みがあらかじめ仕込まれており、ゲームの面白さと集客を同時に達成できる作り込みがなされている。
熱狂的なファン層を持つニッチの代表として、2012年11月26日にリリースされた「ホモォ┌(┌ ^o^)┐」(アプリカ)を見てみる。
このアプリはリリース直後には動きはほとんどなかったが12月3日にウェブ媒体で取り上げられことを境にダウンロードランキングも上昇し、12月8日には無料ランキング68位となり12月11日は21位になっている。ここでもTwitter上でこのアプリについて言及されることが全Andorid無料アプリの中でも上位となり1位となる時間帯もあった。このアプリもTwitterでの集客とアプリの面白さを組み合わせた方法が用いられている。
ここではウェブメディアでの紹介やTwitterによるバイラル効果による自然流入による集客手法を紹介したが、アプリ用アドネットワークなどによる広告からの集客手法も各広告代理店などが持つノウハウによる手法があり、費用対効果を考慮しつつ、ビジネスとして実行するかどうかの判断となる。
コンテンツの面白さと収益性のバランスを保ちつつ集客と固定客化を推進し儲けを出す方法論が確立した2012年だったと言える。
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