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2013年の展望

スクエニ「特モバイルニ部」に聞く--スマホゲームのこれまでとこれから - (page 2)

佐藤和也 (編集部)2012年12月29日 09時30分
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 今年、特モバイル二部はカードバトル要素に、前述したような優れた発展改良を加えたものを多くリリースしました。「拡散性ミリオンアーサー」、「ガーディアン・クルス」、「エンペラーズサガ」、「ギャラクシーダンジョン」がその主だったところですけど、特にミリオンアーサーで大きな成果をあげることができました。

 2011年はカードバトルをガラケーに向けて展開した新興の会社が大きな成果をあげましたが、この流れにのって、専用ゲーム機的なもてなしを、それもコンシューマゲームのプロデュース経験のあるチームが本格的に加えたらどうなるかをやってみたのです。今後、専用ゲーム機とスマホも垣根がなくなるに時代に向けてのトライアルの意味合いが強いプロジェクトでしたが、想像以上にヒットしたというのが正直な感想です。

 プロデューサーの岩野弘明共々、ある程度支持していただける自信はありましたが、本番は来るべきゲーム機とスマホの垣根がなくなる時代だと考えていたので、じっくりと育ててナンバーワンにする予定でした。それが競争の激しい現在のApp Storeにおいて、サービス開始1カ月以内に、パズドラを抜いてナンバーワンタイトルになったのは望外の結果だったといえます。

 まだまだ運営やお客様へのサービス面では不安定なところや反省点が多々ありますので、体制から見直しをかけ、少しずつではありますが日々改善しているところです。スマホの運営サービスでいえば、この1年でガラケー向けのライトな運営から、もはや中規模のMMORPGの運営スケールへと、一気変わったのも印象的なトピックです。正直、この変化の幅とスピードは想像以上で、そこがまだ思い描く十分な運営体制を築くまでにいたっていない要因といえます。もうすでに携帯のソーシャルゲームを創っている感覚はまったく無くなりました。完全にオンラインゲームを作って運営している状態になっています。

「ガーディアン・クルス」
「ガーディアン・クルス」
(C)2012 SQUARE ENIX CO., LTD. All Rights Reserved.

 ほかにはガーディアン・クルスにおいて脱ガチャガチャを標榜し、マネタイズに関しても一定の成果をあげることができました。プロデュースを担当した田付信一の強いこだわりが光りましたね。今年は消費者庁のコンプリートガチャ問題がありましたが、ガチャガチャに頼らないオンラインサービスについてもノウハウが溜まりました。平たくいえばガチャが無くても大丈夫。今後はゲームに応じて、その遊びを最も快適にドライブさせる課金方式を、その都度採用できればと考えています。

――パズドラとは「クリスタル・ディフェンダーズ」とのコラボレーションも実施しました。

 クリスタル・ディフェンダーズは「ファイナルファンタジータクティクスA2 封穴のグリモア」のスピンアウト作になりますが、それであっても、ファイナルファンタジーシリーズが他社の作品にゲスト参戦するのは、本当に珍しいことです。これはガンホーさんと弊社の両社が前向きな協力で、よいスピード感でお届けすることができました。思えばパズドラの登場から1年たっていないわけですから、まさにスマホサービスにおける高速展開の本領といったところです。こういったメーカー同士の垣根の無さも、コンシューマゲーム機の時代からは考えられないことです。黎明期ならではの大らかさなのかもしれませんが、今後も面白い作品や共鳴したクリエイター同士が、軽いフットワークでコラボできる業界でありたいなと思っています。

――業界動向としてのトピックスがありましたら教えてください。

 スピード感では、新興のソーシャルアプリプロバイダーの海外展開が鮮やかでした。「Rage of Bahamut」(日本名は「神撃のバハムート」)の米国におけるセールスナンバーワンは快挙だと思いますし、これに続いて多くのプロバイダーによるソーシャルゲームが「ガチャは日本以外では難しい」といわれていた中、その素早さによって成果をあげました。この点、我々はガーディアン・クルスの海外展開とミリオンアーサーの韓国展開のみにとどまりました。最近始まったミリオンアーサーが韓国のApp Storeで売り上げナンバーワンになりましたが、本格的な海外進出は2013年以降になります。スピードにおいてはプロバイダーに見習うべきところが、まだまだたくさんあった2012年でした。

 プラットフォームに関して言えば、LINEの登場も忘れてはいけません。誰が今年の正月の時点で、こういった形でプラットフォームが形成されることを想像できたでしょうか? スマホにおいてはGREE、Mobageよりも強力な存在感を発揮し始めています。ここ数年は毎年、こういった予想外の逆転ホームランがプラットフォームにおいても起こるという、実にエキサイティングな状況になっています。

――安藤さんが感じている、スマートフォン向けゲームの魅力はどこにありますか。

 これまで15年間で、スクエニでも最も多くオリジナルタイトルを手がけてきた私としては、この「オリジナルタイトルが受け入れられる市場」というのが最大の魅力です。家庭用ゲーム機の市場においては、続編やIPものに打ち勝つのは至難の業であり、その大変さを長年、身に染みて感じてきました。結果、私はその分野では一度打ち負けたわけですが、スマホゲームはその点オリジナルタイトルの天国です。日本のApp Storeにおいては今日も、トップセールス上位20タイトルのほぼすべてが、何も無いところから誕生したオリジナルタイトルです。新しいチャレンジに寛容なマーケットなわけですから、なおさらゲームシステムが似通っていてはイカンと思います。

――今後のスマートフォン向けゲームのトレンド、そしてそこに向けて特モバイル二部としてどう取り組んでいくかを教えてください。

 今年の特モバイル二部はこれまで書いたタイトルのほかにも、2011年まで通用していたゲームの正当進化系タイトルを2本リリースしました。2010年にリリースしたスマホ専用RPG「ケイオスリングス」は、日米をはじめとする15カ国で売り上げナンバーワンとなったのですが、この続編にあたる「ケイオスリングスII」と、完全新作RPGの「星葬ドラグニル」です。それぞれ2000円で売り切り、序章は無料・章配信1800円の形で配信しましたが、2年前と比べると、同じようなセールスの結果とはいきませんでした。個人的には、パッケージゲームの幻影を引きずった形の販売形式が終焉を迎え、基本無料に完全移行したと痛感したのも2012年でした。

 ただし、あくまで販売形式のトレンドが変わったのであって、ゲームらしいゲームであった上記2作品の制作で感じた手ごたえは、来年以降ますます必要になってくると思います。お客様はスマホであっても、ゲームらしいゲームを確実に求めています。さらにそれを、昔よりも手軽に体験したいとも思っています。来年はミリオンアーサーで培った基本無料の販売方法やサービス形式、スピード感、ケイオスリングスで積み上げたゲームづくりの両輪が融合する積集合のようなゲームをリリースする予定です。これが、2013年におけるスマホゲームの新たな潮流になります。カードバトルもガチャもブラウザ形式もネイティブ形式も、どのプラットフォームであっても、いよいよ本当に面白いもの、良いものだけが平行して残っていく、そんな2013年になると考えています。

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