普及モデル「ルンバ630」レビュー--性能、価格面でニーズを捉えたロボット掃除機

 従来よりも価格を抑えた普及機として10月に登場した、ロボット掃除機「ルンバ600シリーズ」。今年2月に発売された500シリーズの後継機とも言える製品で、ハイエンドモデルである700シリーズの機能の一部を限定し、付属品を最低限に絞ることで、消費者が購入しやすい価格帯に抑えた。

  • 500シリーズと700シリーズのちょうど中間という印象のデザイン。500シリーズをベースに中央の円の部分に黄色い縁取りが付き、近未来的なデザインの700シリーズっぽさもある。床下10センチ以下まで潜り込める高さだ

 ハイエンドモデルである700シリーズのいわば廉価版という位置づけだが、ロボット掃除機の核心的な性能面ではほぼ同等。開発を手掛けるアイロボット社独自の「人工知能 ARARE」と複数のセンサにより室内の状況を検知し、その結果を「高速応答プロセス iAdapt」により高速処理を行い、メーカーが公称するゴミの除去率は99.1%と700シリーズの水準を維持する。

 一方、700シリーズとの主な違いは付加機能にある。タイマー予約できる「スケジュール機能」や、本体上面にある操作盤の「タッチパネル機能」、ダストカップにゴミが溜まると知らせてくれる「ゴミフルサイン機能」が省略されている。このほか、メンテナンス用の部品がフィルタ以外は付属しない。また、ルンバ600シリーズは、ルンバ630とルンバ620の2機種がラインアップする。交換用のフィルタが付属するか否かが違いで、直販価格はそれぞれ5万4800円、4万9800円。

 というわけで、機能をシンプルに研ぎ澄まして登場した600シリーズだが、上位モデルであるルンバ630を試用してみた。

700シリーズとの相違点では、ダストカップ内の排気フィルタ

  • リモコン。中央のボタンは、本体のボタンと同じで、上部の十字キーで位置を操作しながらルンバをコントロールできる

 まずは、見た目に関しては旧モデルとほぼ同じ操作ボタンのある中央の丸い部分に黄色い縁取りがされている。一方、裏面を見てみると、メインブラシは700シリーズと同じ柔らかい素材の新型ブラシが採用されている。700シリーズとの相違点では、ダストカップ内の排気フィルタ。HEPAフィルタと呼ばれる高性能なフィルタを使っているハイエンドモデルに対して、600シリーズでは500シリーズと同じ簡易なフィルタが搭載されている。

 実際に動かしてみた感じは、他のシリーズとの違いははっきり言って一般の人にはわからないだろう。本体に「ソフトタッチバンパー」と呼ばれる、衝撃を吸収するための柔らかい素材を使ったバンパーを搭載している700シリーズに比べると、確かに障害物に対しては体当たりな感じはするが、直前でスピードを緩める性能は上位モデルと同等という印象。500シリーズより力加減が制御されているようで、安心感がある。

  • 裏面。前方片側のエッジクリーニングブラシで壁際や隅のゴミを掻き出し、中央の吸引部で吸込み、後部のダストボックスに溜め込む仕組み

  • 吸引部にある2種類の回転ブラシ。手前にある絨毯用のメインブラシはシリコンっぽい素材を使い柔軟になった新型が採用されている

  • エッジクリーニングブラシ。3本の柔軟性のある脚の長いブラシで、家具の足元や壁際のゴミを弾くように掻き出す

  • バーチャルウォール。従来品と同じだが、電池を出し入れするフタが固くて毎回難儀するので、次のバージョンではこちらも改良してほしい

 また、柔らかい新型ブラシを採用しているため、500シリーズに比べて床面との摩擦が少なく振動も音も静かだ。700シリーズでは、音波センサと高感度光センサの2系統のゴミセンサを備えているのに対し、音波センサのみだが、目に見えるゴミはしっかり捕集してくれ、ゴミ除去率99.1%の謳い文句に嘘はないと感じる。

 さらに、700シリーズ同様、コード類を巻き込むとブラシが逆回転する「からまり防止機能」も働く。コード類の巻き込みはルンバがエラーで停止するいちばんの要因なので、ポイントが高い。

 付属品のリモコンについては、リモコンは特に旧式のものと変わりはない。自走するのが長所とはいえ、部分的に掃除したい場合や重点的に掃除したい場合には、本体単体では操作できないのでなくてはならない装備品だ。このほか「バーチャルウォール」と呼ばれる、赤外線で仮想の壁を作り、侵入させたくない場所にルンバを入らせない付属品がルンバ630には2つ付属する。

 ルンバ630の全体を通した感想は、その名のとおりハイエンドモデルの700シリーズと旧機種の500シリーズの中間的位置づけといった印象。単体で特筆すべき性能や機能はないものの、必要なものを厳選しながらも、プラスアルファがちょっとある“いいとこどり”をしたという感じで、それでいて旧機種の500シリーズと同等の価格なのでお買い得感がある。いわば仕様を大きく変更したというよりも、パッケージを変えただけではあるが、500シリーズで一般的な認知度が高まり、一定のユーザーに普及し、性能面でも価格面でも消費者のニーズを的確に捉えたまさに普及機の名にふさわしい機種と言える。これまで価格的に手が出せなかった消費者がさほど抵抗感なく手に入れることができ、かつ満足度の高い商品だ。

  • ダストボックス部分は500シリーズを継承。簡易フィルタなので、裏側に少しゴミが漏れてしまうため、気になる人は高性能フィルタを採用した上位モデルを選びたい

  • 前方左右に4つ、センサの検知カ所がある

  • 前面のバンパー部分。他と同じプラスチック素材なので、柔軟素材を使った700シリーズには劣ってしまう

  • 後方の排気部分。簡易フィルタが採用されているものの、稼働中排気臭がするということはほぼない。ただし、毎回ダストカップのゴミを捨てて、お手入れもこまめにしたい

  • 充電台。他機種と機能や性能は同じだが、ルンバが自動で充電台に戻って充電する点は便利だが、ACが邪魔になりがちで、充電台が軽くルンバの力で移動してしまうことが多いので、相変わらず改善を望みたい部品だ

  • このように取り外して掃除する

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