スタートアップとエンジェル、VCがIVSで語った資金調達の“本音” - (page 2)

岩本有平 (編集部)2012年12月13日 18時00分

 この1年でインキュベーターと呼ばれる創業期の支援者が増えた一方、その先の投資を受けられないという起業家が出てきていると語る塩野氏。同氏はここで、投資家側の2人に起業家がVCから投資を受けるためのアドバイスを求めた。

 川田氏は「(起業家が)手金を入れていない会社には(資本を)入れない。意味が分からない」と語気を強める。小澤氏もこれに同意し、「社長が借り入れしていて、個人保証をしていると、『気合いが入っている』と思う。ただしあくまで本気度を測る1つのバロメーター。口で『死ぬ気でやる』と言って納得できればそれでいい」(小澤氏)とした。

 エンジェルとしてスタートアップに投資をしてきた小澤氏だが、エンジェルとしての投資とYJキャピタルとしての投資は、大きく異なると説明する。「ヤフーでやるのは、キャピタルゲイン。そしてヤフーにとって価値があるかどうか。個人でやっていたときは『好きか嫌いか』という直感、主観」(小澤氏)。

 一方、現在もエンジェルとして投資を行う川田氏は、「サービスが良くても役に立てないなら出さない。だが人の(好き嫌いという)レンジは狭い方でない。どちらかというとプロダクトベースで判断する」と語る。

“出口”を迎える起業家の心情

 9月にヤフーが買収を発表したコミュニティファクトリー。松本氏は塩野氏に当時の気持ちを尋ねられ「後ろめたさがあった」と当時を振り返る。

 起業し、投資家から資本を集めている以上、やはりIPOしたい。ここで会社を売却して勝負から下りるのは「早上がり」ではないか――理屈ではこのタイミングで売却すべきと思っていても、踏ん切りがつかなかったのだという。

 そんなとき、松本氏は川田氏を訪ねて相談したところ、「IPOなんて1回してしまえばこんなものかと思う。でもしていなければ1回はしたいと思う。その程度のものだ」と言われ、IPOにこだわらないという決心をしたそうだ。「なるべく自分でやりたいという思いと、スマートフォン業界が戦争のようになっていて、自力では勝てない状況にあった。ヤフーに入った方が勝てるのではないかと思った」(松本氏)

 スマートエデュケーションの池谷氏も、松本氏に近い考え方だという。「IPOは事業拡大のための手段。何が一番いいのかはその時点時点で考えて行く。株主が増えるとIPOの色は濃くなるが、『率直にIPO』とは思っていない」(池谷氏)

 この後、会場から川田氏と小澤氏に対して「投資したかったができなかった企業はあるのか」といった質問が投げられた。

 これについては両氏ともに数多くあると回答した。川田氏がすでにバリエーションが上がっていて条件が合わなかった企業やすでに上場に向けて準備を進めていた企業もあると語れば、小澤氏がかつて同僚だった上場企業の代表取締役社長の名前を挙げて「(かつて両者とも楽天に在籍しており、)同じ部署で働いて毎日メシを食って、サービスの1万会員突破記念のイベントも僕が司会をしたのに」と冗談まじりに振り返り、会場の笑いを誘った。

 最後に塩野氏は起業家側に「投資を受ける際にこれだけは気をつけろ」という点、投資家側には「自分が投資するならこれは外せない」という点を尋ねた。最後にそれぞれのコメントをここで紹介する。

 「(コミュニティファクトリーは)ソーシャルをストイックにやってきた。ファイナンスの前に、目指す領域でのプロダクト、(プロダクトが)なければ知識だけでも持っておく」(松本氏)。「VCもちゃんと相談できるほうがいい。そういう(相談できる)パートナーをつけるのもいい」(池谷氏)。「ファイナンスは焦らないほうがいい。寝ても覚めてもやりたいのでなければ、アドバイスを受けながら100%自分でやる」(吉田氏)。「プロダクトやサービスを(投資の際に)見るので、驚くようなものを見たい。また、投資家は最初のフェーズでも、リードを取ってくれる人がいた方がいい。誰かが50%持つという意味でなく、(企業の危機に際して起業家に)迫れる人を1人入れないと、自然消滅的に会社が消えるというケースもある」(川田氏)。「是非ヤフーを使い倒して欲しい。また、現状でも成功しているが、ヤフーがつくともっと成長するという人が刺さる。『今はゼロ(成功していない)ですが…』と言われると厳しい。投資はネット領域全部を見ている」(小澤氏)

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