IBMは米国時間12月10日、シリコンフォトニクス技術を進化させ、光データリンクによるデータの送受信が可能なコンポーネントを組み込んだマイクロチップを開発したと発表した。
光データリンクをチップに搭載する研究は以前から行われているが、IBMの取り組みが注目に値するのは、90ナノメートルプロセス用の標準的なチップ製造設備を利用していることだ。現在のチップはデータのやり取りに金属線を使っているが、光データリンクなら、より長い距離でより高速にデータを転送できる。
このチップに搭載されている光学コンポーネントの1つが、波長分割多重化装置だ。この装置により、チップが複数の周波数の光を利用して信号を送受信できるため、同じ時間内に1つのチャネルでより多くのデータを送信できる。
このIBM製チップは、1秒間に25Gビットの速さでデータを処理できるが、技術が向上し、かつ複数の通信チャネルを同時に利用できるようになれば、さらに速度を高められると研究者らは期待している。
この研究は、ムーアの法則の限界を超えて演算性能を高めることを目指すIBMの継続的な取り組みの一環として行われているものだ。
IBMでは、この技術を大規模なシステムに活かしたいと考えている。スーパーコンピュータ、相互接続されたサーバ群、サーバ内のデータの通り道である「バックプレーン」などだ。もちろん、ハイエンドサーバ向けの技術がコンシューマー製品に活用されることも珍しくない。
IBMが使用した90ナノメートルプロセスは、今のハイエンドPCに使われている最新の「Ivy Bridge」世代のプロセッサでIntelが使用している22ナノメートルプロセスほど先進的なものではない。だが、IBMは論文の中で、同社の手法は100ナノメートル未満のプロセスによるチップにシリコンフォトニクスの技術を取り入れた初めてのケースだと述べている(1ナノメートルは10億分の1メートルで、90ナノメートル回路を構成する素子は、人間の髪の毛の直径と同じ幅に1100個ほど並べることができる)。
また、IBMの手法は電力を効率的に利用できるが、現在プロセッサやコンピュータの設計者が直面している電力の限界を考えれば、これは非常に重要なことだ。
IBMは24名の著者によるこの論文を、米国電気電子学会(IEEE)主催のInternational Electron Devices Meetingで発表した。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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