Wi-Fi機能を搭載したカメラは脅威か?--Eye-Fi創業者に聞く、開発エピソードと戦略

 無線LAN機能を搭載したSDカード「Eye-Fi」の最上位モデルとなる「Eye-Fi Pro X2 16GB Class10」が11月14日より数量限定で発売された。Eye-Fiといえば、“スマホかんたん設定”に対応し、Androidデバイスとの連携を意識した「Eye-Fi Mobile X2 4GB for docomo」(4月10日発表)が記憶に新しいが、今回発売されたのはより大容量、より高速化された正統進化モデルだ。

 “SDカード”に求められてきた大容量、超高速というニーズに応えた製品だ。そんなEye-Fiカードについて、Eye-Fi設立者の一人でプロカメラマンでもあるZiv Gillat氏とアイファイジャパン代表取締役の田中大祐氏に、Eye-Fiカードの開発に関するエピソードとこれからについて話を聞いた。

――設立者の一人ということですが、Eye-Fiカード制作の“きっかけ”とはどんなものだったのでしょうか。

Ziv:2005年から2006年頃に設立メンバーとコーヒーを飲みながらカメラ業界の今後について話し合っていたのがきっかけですね。メンバーの中には既に子持ちもいて、そういった意味での写真を撮ることに対する重要性についてはわかっていたつもりです。しかし、カメラの中から写真を取り出すという行為がとても面倒でした。

 では、どうやったら簡単に行えるのか。そういったことをメンバーと話し合っていたわけです。その中で、例えば外付けUSBデバイスはどうだろうかとか、さまざまな視点でその手段を検討していた結果、SDカードの中にワイヤレス機能を入れようという結論に達しました。

 きっかけという意味で個人的な話をすると、2人目の子どもが生まれた時、写真を撮ってもパソコンに保存せず、ほったらかしという状態が続きました。そこに“罪”の意識を感じて生活していたんです。他のメンバーも似たような感じで、例えばCEOのYuval Koren(設立者)は、結婚式の写真を送ると言いながら送らなかった。もっと手軽に写真を扱う方法を模索していたわけです。

Eye-Fi創業者の一人でプロカメラマンでもあるZiv Gillat氏
Eye-Fi創業者の一人でプロカメラマンでもあるZiv Gillat氏

――設立メンバーとはどのように知り合ったのですか。

ハンドメイドのEye-Fiカードパッケージ
ハンドメイドのEye-Fiカードパッケージ

Ziv:設立メンバーは“とても”気心の知れた仲間で構成されています。私とYuvalは13歳からの知り合いで、幼なじみという関係。そして、Yuvalと設立者の一人であり、ハードウェアの設計者でもあるEugene Feinberg、システムアーキテクトを担当するBerend Ozceriが仕事仲間という関係です。特にEugeneとBerendは、一緒に住んでいたくらいの仲良しで、大学、大学院、そして初めの会社、次の会社、その次の会社と、ずっと同じ会社で働いている仲でもあります。

 そんなメンバーですが、Eye-Fiが立ち上がる3年くらい前から、4人で一緒に食事をするようになりました。そして、2006年1月1日にメンバー全員が前職を辞め、会社を立ち上げたのです。ちなみに、2008年の初頭には、アイファイジャパン代表取締役となる田中大祐氏との出会いもありました。

田中:初めてのミーティングの時に、箱に並々ならぬ想いを持っているだろうと、ハンドメイドの化粧箱を持っていきました。

Ziv:ビジネスライクに接する日本の企業が多かったのですが、こういった“形”で気を引いたのは、はじめてのケースでしたね。それからの付き合いになります。

――設立メンバーでの役割分担はどのように行われたのでしょうか。

Ziv:実は、4人ともバックグラウンドはエンジニアなのですが、特にEugeneとBerendはハードウェアからソフトウェア、オンラインのエンジニアリングまで対応できる人材です。それを活かすために、私とYuvalがビジネスディベロップメントを担っています。

――2006年というと、SDカード規格である「SDHCカード」が発表された頃ですね。1Gバイト、2Gバイトといった容量のカードが主流で、大容量化と高速化が望まれていた時代だったと思います。そんなSDカードにワイヤレス機能を搭載するというのはある意味“挑戦”だったのではないでしょうか。


初代Eye-Fiカードのレイアウト

Ziv:実は、話が出た当初は懐疑的でした。そんな中、Eugeneが「絶対にSDカードにワイヤレス機能は搭載できる」と言ったんです。驚いたことに、1~2日で設計図を起こしてきました。

 2Gバイトのフラッシュメモリに、フラッシュメモリをコントロールする「ハイパーストーン」、アンテナとアンテナの増幅器、そして、EugeneとBerendが働いていた“Atheros”のチップにコードを書いて、Eye-Fiの初期モデルとしました。できあがった世界初のEye-Fiカードは世界で最も高いEye-Fiカードとなりました。もちろんプロトタイプですから当然なのですが、だいたい1500ドルぐらいだったと記憶しています(当時のレートで20万円程度)。

――設計図がそんなにも早くできあがったのにも驚きましたが、すんなりとプロトタイプは作成できたのでしょうか。


初代のEye-Fiカードの内部

Ziv:プロトタイプには、チップが満載でしたから、プラスチックケースへの収納が大変でした。具体的にいうと、超音波でプラスチックケースを融合させるのですが、中のチップを壊さないようにするという点ですね。その後、2006年4月1日にアルファ版が、同9月1日にベータ版が完成しました。

 特にベータ版は「欲しい人は買って」という扱いで販売もしました。1枚800ドルだったのですが、飛ぶように売れ、その売り上げでソフトウェア強化のためのエンジニアを雇うことができました。そして、2007年第4四半期にオンライン・リテール版のリリースとなります。一番はじめのEye-Fiカード(初期型)は、2Gバイトのメモリを搭載したモデルです。当時、まだ速度表記(クラス)というものがなく、書き込み速度的には1.5~2Mバイト/sec、転送速度は6~8Mバイト/sec程度でした。新しいEye-Fiカード(Eye-Fi Pro X2 16GB Class10)の書き込み速度が23Mバイト/sec、転送速度が13Mバイト/secですから、今から考えるとだいぶ遅かったですね。

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