第5回 日々のマネジメント活動で評価する

金津健治(産業能率大学総合研究所)2012年11月19日 10時30分

 前回前々回で、目標管理・人事評価の「P(計画)」段階でのハウツーを紹介しました。今回は、「D(実行)」段階のポイントを紹介します。

1 評価は「日々」伝える

 評価の納得性を上げるには年に1~2回の評価面接をきちんと進めることが大事だと誰もが考えますが、それ以上に重要なものがあります。毎日のコミュニケーションの中で評価を伝える「日々評価」です。

 某メーカーの所長はルール通り年2回面接し、評価面接で目標達成に向けて問題点を指摘し改善を求めました。しかし部下から思わぬ反発を受けたそうです。

 部下「所長は評価面接で初めてここが問題だから直せとおっしゃるが、なぜ普段から言ってくれないのですか。最後の最後になって指摘なさるなんて、単なる嫌味ですよ」

 この一言に愕然とした所長は、日々のコミュニケーションの大切さを自覚し、この日を境に毎日会話することにしました。所長は多忙な中で時間を割き、担当者が戻ってくる夕方18時に事務所で担当者を待ちます。帰ってくると、担当者に「ご苦労さま」と声をかけ、一言添えます。「今日はどうだった?」。

 注文が取れた部下には元気な声を返します。「君の努力が実ってよかった」と所長が賞賛の言葉を返します。

 一方、無言でうつろな焦点の目をした表情を返す部下もいます。所長はその表情を見て「何かあったのか、大丈夫か?」と問い掛け、部下から真相を聞きだします。「クレームか。どういう状況だ? 話を聞こう」。

 このようなコミュニケーションがとれるようになってから、部下の評価に対する納得性が高まったそうです。部下の働きぶりを把握し、その場で指導したり助言したりする。これが「日々評価」なのです。

2 日々評価のマネジメントの5つの機能

 上述の通り、マネジメントの場・手段を上手に活用すれば評価の納得性を高めることができます。その「日々評価」のマネジメントには5つの機能があります。

 1) 部下の目標の進捗状況、働きぶりを把握する

 部下に報告をさせたり、観察等で目標の進捗状況、働きぶりを把握したりします。ここで大事なことは、目新しさはありませんが、しっかりと「メモ」をしておくことです。管理職は忙しく、どうしても具体的な事実は忘れがちです。

 2) 部下の目標達成に向けて指導する

 目標達成の遅れが判明すれば、同行やアドバイスにより、目標達成に向けて指導します。

 3) やってみないとわからない目標を明確にする

 新規の取り組み、調査分析が必要な目標は、年度初めに明確に設定できません。このような場合は、期の途中で部下の取り組み状況をふまえ、目標を明確に設定できるよう指導します。

 4) 報連相を行う

 まさしく日々の報告・連絡・相談です。申すまでもありません。

 5) 評価する

 部下の取り組みのよい・まずい事実や、改善点を指摘・指導することです。

3 日々評価のマネジメントを見える化する

 こうした日常的な評価を実現するためにも、年間の主なマネジメント活動を整理しましょう。「年間のマネジメント活動の体系表」を活用して、マネジメント活動を「場・手段」「目的」「参画メンバー」「時期・時間・頻度」「進め方の工夫」に分けて具体化します。掲載図表は、総務課長の年間マネジメントのうち、朝会、月例課会、勉強会、中間評価面接、評価面接、部長報告を整理したものです。これを参考に、ぜひ活用してください。

図表
図表

金津健治

産業能率大学総合研究所

主席研究員

1954年生まれ。慶應大法学部卒。金融機関、コンサルティングファーム勤務を経て、87年学校法人産業能率大学入職。メーカーからサービス業まで、幅広い業種で、目標管理制度・人事評価制度の導入や定着化のコンサルティング、研修分野で活動。管理職研修や被評価者研修などの実績も多数。著書に「七つの能力-管理職前に身に付ける技法42」(日本経団連出版)、「目標管理の手引き」(日本経済新聞出版社)、「管理職のための七つの道具術」(プレジデント社)など。

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