次世代のメガベンチャーを生み出すにはどのようなスタートアップ支援が必要か――KDDIとグローバル・ブレインは11月12日、2月に設立したコーポレートベンチャーファンド「KDDI Open Innovation Fund」(KOIF)の説明会を開催。パネルディスカッションでは各社のベンチャーキャピタリストが登壇し、それぞれの立場から意見を述べた。
「スタートアップが効率よく成長するためには大企業のヒト、モノ、カネを有効に活用することが大切と感じている」。そう語るのはグローバル・ブレイン代表取締役社長の百合本安彦氏。大企業がスタートアップと連携するメリットはスピード感とする一方、文化や社会的な責任感といった点で双方に意識の「ズレ」がある場合も多い。百合本氏は主に事業系ファンドを運営しながらその橋渡しをしているのだという。
またスタートアップ支援の実例として、KDDIが運営するインキュベーションプログラム∞ Laboの活動実績が紹介された。同プログラムではauスマートパスに導線を追加するマーケティング支援、auショップを使った展示などを実施しているが。中にはKDDIの事業部と連携して、事業者向けのソリューション開発を実施、共同受注を成功させるという事例もあったそうだ。
後半のパネルディスカッションは興味深い内容だった。ファンドとひとくくりにしても、銀行や金融会社が運営するもの、KOIFのように事業会社が運営するコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)からインキュベーターが運用するものなどさまざまな形態が存在する。パネルの壇上にはこの微妙に立場の違う事業者、ベンチャーキャピタリスト5人が顔を並べた。
事業会社系ファンドの投資スタンスには「本業にメリットがあるか」というものが多い。リクルートホールディングスの浅野哲氏が「事業を数多く手がけているのでシナジーを重視している。(具体的には)中長期で事業のメインになるスタートアップを探している」と言えば、KDDIの江幡智広氏も「既存の事業をどうやって繋げていくかを先に考える。ベンチャーが考えている事業のスコープや世界観はよく聞いて、自分達もその考えに乗っかっていくことで理解しようとしている」と回答する。
一方、事業会社が運営するファンドでありながら少しスタンスが違っているのがサイバーエージェントベンチャーズだ。代表取締役の田島聡一氏は「サイバーエージェントの事業方針とは関係なく、独断と偏見で決定している。ただ、サイバーエージェントグループの中でも相当カニバって(競合して)いる」と苦笑いを浮かべるひとこまもあった。
金融系代表として参加した、みずほキャピタルの南俊彦氏はシード段階の投資について「事業会社系が圧倒的に強い。第三者割り当ての情報が出た時にはすでに他の事業会社が億単位で投資してしまっている。その後の事業をシードからアーリーに持っていくところもやはりネットワークが強い事業会社に地の利がある」と、シード期投資の不得手を認める。その一方で「いくつかの事業系ファンドにはコ・インベストメント(協調投資)について大いに期待している」と連携方法については明確にイメージがあるようだ。
また、シード期におけるインキュベーションの役割も担うインキュベイトファンドの本間真彦氏は、これらの生態系をつくる上で「トレンドとなる情報の共有」が重要と語る。「シード投資をやってプログラムを組んで、金融系の大手VCにバトンを渡す時、次のイノベーションがどこに向かうかをつかんでいるかどうか。これを事業会社と早めに共有することで、起業家に対してプランを提案できるし、彼らも時代の潮流に乗ることができる」とし、「実際に事業会社との協業は増えていて、比較的速い段階から相談するようになっている」と語った。
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