メイカームーブメントは「第3の産業革命」--クリス・アンダーソン氏 - (page 2)

岩本有平 (編集部)2012年11月12日 18時30分

 アンダーソン氏は先日WIRED編集長を辞任すると発表したばかり。今後は、自身が設立した3D Roboticsに注力するが、その経緯についても語られた。

 同氏はまず、米国の経済学者ロナルド・コース氏の説いた取引費用の最小化理論(コミュニケーションや取引のコストを最小化するために人々は1つの企業に集まって働く、というもの)を紹介し、続けてサン・マイクロシステムズ共同創業者であるビル・ジョイが語った「本当に優秀な人間は会社の外にいる」という言葉を紹介した。つまりコミュニケーションコストを優先すると、言語が違う、学位を持っていない、それでも優秀という人材とは働けないということだ。しかしこういった課題をウェブこそが解決すると説く。

 ドローン(ロボット)制作の趣味から、オンライン上で「DIY Drones」というコミュニティを立ち上げていたアンダーソン氏。スマートフォンで操作できるような飛行機ドローンなど、さまざまなプロジェクトを掲げて、コミュニティのメンバーで作り上げてきた。

 そのコミュニティにアクセスし、ドローンの動画をアップしたメキシコ出身のジョルディ・ムノス氏という青年とアンダーソン氏は3D Roboticsを設立することになる。ムノス氏は学位もない、10代の若者。だが彼はインターネットを使って知識を得て、それを共有し、最後には周囲の友人を巻き込んで工場を作るまでにいたった。「10年前ならこういったことが実現する確率はまずなかった」(アンダーソン氏)

 だが今では、クレジットカード1つあれば、翻訳ソフトとPayPalを使って数日で中国からカスタマイズしたモーターを購入することすら可能だ。アンダーソン氏はそんな状況から「個人でも中国の工場にアクセスできる。マス生産を簡略化したメイカームーブメントの始まりを感じた」と振り返る。

 今では2つの工場を持つに至った3D Robotics。5年前には想像できなかったこの状況こそが、MAKERS執筆のインスピレーションになったという。

 「もう趣味ではなくなった。私は次のキャリアを見つけた。50年前、10年前でも可能でなかったが、今ではクレジットカードさえあれば(ものづくりが)できる。ツールも簡単に使える。アイデアさえあれば誰だって挑戦できるという面白い時代。製造業に希望を持っている」(アンダーソン氏)

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