これは非常に難しい問題です。そもそもイー・アクセスの市場参入時点では5社による市場競争を想定されていた(ソフトバンクは新規参入を予定していたが、Vodafone買収による参入に切り替えたため4社体制となった)わけですが、基地局設備の重複などを考慮すると、必ずしも事業者数が多ければ多いほどいいとも言い切れません。
ただひとつ言えることは、ここで3社体制にしてしまうと再び4社に増やすことは困難である、ということです。だからこそ、慎重な対応を求めているわけです。
イー・アクセスが割り当てられていた700MHz帯をどのように扱うのかわかりませんが、免許の名義を書き換えて名実とともに自社のものにするにせよ、あるいはイー・アクセス社を子会社化して名義をそのまま残すにせよ、総務省への届け出とおそらく大臣名の許可は必要です。同様に公取委から企業合併の許可を得る必要もあります。この段階においても何らかの規制を加えることは十分に可能でしょう。
なお公取委には、産業内企業数を他産業と比較する際に、携帯産業ではサービスの輸出入がないため国内市場が海外から切り離されており、競争状態を評価するときには注意が必要であることを付け加えておきたいと思います。
仮に企業組織の合併自体が経営的に不可避な状況にあるというのであれば、少なくともイー・アクセス社に割り当てられた周波数については一度免許を辞退、つまり電波を国民に返還すべきです。無償割り当て以前とは明らかに市場の状況が異なるわけで、それをそのまま利用するというのは到底認られることではないと考えます。
日本企業の海外進出ケースとして喜ばしいものと考え、成功を望んでいます。もっと言ってしまえば、仮に不成功に終わったとしても、国内ソフトバンクモバイルユーザーを含む国民に対して悪影響を及ぼすものではありません。同時に、こうしてソフトバンクが海外事業者の買収に乗り出したように、イー・アクセス買収についても海外資本の参入を認める動きがあれば本件の状況も少しは変わったように思います。
通信事業に対し、海外資本を排除しているかのような状態を続けているのは先進国で日本くらいのものです。現在の先進国携帯市場では国内外の事業者が相互に参入しており、先進国以外の市場には先進国事業者の進出が盛んです。最近では中国の携帯事業者の海外進出ニュースをよく目にします。
日本の携帯事業の国内孤立・閉鎖という実情は、広く市場競争を活性化する目的から見て意味のないこだわりです。いずれにせよ、国民の財産である周波数を利用して行う事業だからこそ、真に国民のためとなるようルールの構築と運用が求められると考えます。
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