現在主流となっているシリコンチップに代わるものを探し出す取り組みのなかで、IBMの研究者らはカーボンナノチューブ(CNT)技術を大きく進展させた。
カーボンナノチューブは、格子状に結合した炭素原子からなる円筒型の微細構造体である。IBMが米国時間10月28日に発表したところによると、研究者8人からなる同社のチームはカーボンナノチューブをコンピュータチップ上に高い精度で配置する手法を発見したという。同手法により、従来に比べると100倍の密度でナノチューブを配置できるようになる。これは安価なチップを製造するうえで重要な一歩であり、IBMは1万個以上のカーボンナノチューブ素子からなるチップの製造に成功した。
この新たな手法により、現在のシリコントランジスタ技術が限界に達した後の代替技術としてのカーボンナノチューブがより有望視されるようになる。現在使用されているチップは、トランジスタと呼ばれる微細な電気スイッチ群で構成されており、カーボンナノチューブはそういったトランジスタ内で電流を伝達するシリコン製のチャネルを置き換える可能性を秘めている。
マイクロチップは「ムーアの法則」に従い、数十年にもわたってチップの素子を微細化してきており、その流れは今後も続くはずだ。現在のところ、新しいPCに搭載されている「Intel Core」製品である「Ivy Bridge」のトランジスタ素子は線幅22ナノメートル(1ナノメートルは10億分の1メートル)となっており、Intelは今後数世代をかけ、5ナノメートルにまで線幅を縮小できると考えている。ただし、それ以降のプロセッサ製造にはまったく異なった技術が必要となるはずだ。
シリコンの半導体と同様に、カーボンナノチューブには電気的にオンとオフを切り替えるという、チップトランジスタの製造に欠かせない特性を持たせることができる。またカーボンナノチューブは、スイッチをオンにした際の電子の導電性にも優れている。ただ、大量のカーボンナノチューブを正確に配置する手法をチップメーカーが見つけ出さない限り、コンピュータチップへの応用は現実的ではない。
28日にNature Nanotechnology誌に発表されたIBMの研究では、化学的な技術が組み合わされている。こういった技術によりチップメーカーは、個々のカーボンナノチューブを特定のトレンチ上に配置できるようになるという。また研究者らは、カーボンナノチューブ電界効果トランジスタ(CNTFET)を作り上げた際に、カーボンナノチューブの密度を1平方cmあたり10億個にまで高めることができたという。
この記事は海外CBS Interactive発の記事を朝日インタラクティブが日本向けに編集したものです。
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