「これまでの経験から、救援活動をする中でネットのテクノロジーはかなり強力で、かつ他にはない視点で支援ができることが分かってきた」――来日中の、米Google 企業開発担当上級副社長 兼 最高法務責任者であるDavid C. Drummond氏は10月12日、グーグルとして震災復興を支援する取り組みを継続していく姿勢を改めて示した。
グーグルは、2011年3月11日に発生した東日本大震災以降、防災や復興支援に役立つ数多くのサービスやツールを公開している。たとえば、震災直後には安否確認サービス「パーソンファインダー」を公開し、多くの被災者が家族や知人の消息情報を確認できるようにした。
「ネットを活用することで誰でも情報収集や活動に参加できるようになる。まさにクラウドソーシングと呼べるものだと思うが、昨年の震災時に公開したパーソンファインダーはまさに人々がアクセスできる情報データベースとなった。これはグーグルが何かしたというよりも、一般の方がボランティアとして関わってくれたためだと思っている」(Drummond氏)
Drummond氏は、今回の来日で日本政府とも意見交換し、日本における防災力の強化に向けてグーグルとしてどのようなツールを構築すべきか、また復興における両社のパートナーシップ強化の可能性についても話し合ったという。
Drummond氏は「政府からも可能な限りデータを公開してもらうことで緊急計画の策定などに活用できる。私どものような一般企業と政府のデータなどを組み合わせることで、震災時に役立てられるのではないか」とコメント。また、復興フェーズにおいてもグーグルの強みであるテクノロジーを生かしていけると強調した。
グーグルではパーソンファインダー以外にも、携帯電話やガスといったライフラインの復旧状況が分かる「ライフラインマップ」や、被災地の状況を確認できる衛星・航空写真などを公開。また復興に向けて、グーグル製品を通じた被災地の企業のオンライン化にも取り組んでいる。震災を忘れてはならないという思いから、ストリートビューなどを使って震災時の風景を記録する活動も行っている。
グーグル グループプロダクトマネージャの河合敬一氏は、これらの取り組みついて「ひとつの反省は、すべての取り組みが震災後に始めたことである点。それでは遅い。できれば、何かあったときにはもうすでに用意してあって、それをボタンひとつで出せるという仕組みを作っていかなければならない。ぜひこれを力強く進めていきたい」と語り、自治体や企業、ユーザーとともに情報面で備えていきたいと説明する。
グーグルでは、世界中の災害に対応する専門チームを米国に設けており、被災した国にオフィスがある場合は、現地と共同で対応を進めている。東日本大震災でも日本と米国のオフィスが共同で災害対応にあたったが、今回新たに日本にも専門チームを設け、日本が主導で災害対応できる体制を構築したことが明かされた。
「アジア太平洋地域は世界で最も自然災害が集中している地域。国連の統計によれば、自然災害で亡くなる方の7割がアジア太平洋から出ていると聞いている。自然災害が発生する場所に近いところで、そして時差も少ないところから一次対応することで、より迅速で確実な自然災害対応をアジアに向けて行えるようになる」(河合氏)
同社では今後、自治体やNPOとの連携を強化し、地域のニーズに合わせて継続的に復興を支援していく。また、被災地の子どもや学生を対象にプログラミングのワークショップなどを開催することで、教育・人材育成なども支援していきたいという。さらに、震災時にどのように情報が発信され流通したのかを、当時のデータを用いて検証する「東日本大震災 ビッグデータ ワークショップ」などを通じて、将来災害が起きた場合に備えたいとした。
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