石巻を震災前の状態に戻すのではなく、より新しい街へとバージョンアップさせる――このようなミッションを掲げて、石巻を拠点に活動する「ISHINOMAKI 2.0(石巻2.0)」という団体がある。震災から間もない2011年6月に設立され、2012年3月には一般社団法人化も果たした。
メンバーは、地元商店街の店主や、NPO職員、建築家、ウェブディレクター、学生などさまざま。しかし、それぞれが「自分たちの力で石巻を盛り上げよう」という志を持って、自身が得意とする分野で独自のプロジェクトを展開している。現在は14名のコアメンバーが参加しており、サポーターや協力団体を含めると参加者は200名以上におよぶという。
そんな石巻2.0で、“地域産業×IT”という観点で、雇用を促進する環境づくりを目指すソフトウェア開発の拠点「イトナブ石巻」を立ち上げたのが、石巻2.0の理事を務める古山隆幸氏だ。イトナブというプロジェクト名は、「IT」+「営む」+「学ぶ」を合わせた造語だという。
古山氏はもともと東京でウェブディレクションの仕事をしていたが、石巻2.0の立ち上げの際に、Twitter上でウェブデザイナーが募集されていることを知り、自身も石巻出身だったことから参加を決意したという。「石巻2.0のメンバーはそれぞれ何かしらのつながりがある中、自分だけがTwitterから参加したので、当初は知らない人ばかりでした(苦笑)」(古山氏)
現在は東京での仕事を辞め、東京と石巻を行き来しながら、イトナブ石巻として勢力的に活動している。石巻工業高校の生徒向けにITに関する講義を行っているほか、7月27日~29日には、同校で開発イベント「石巻Hackathon(ハッカソン)」も開催した。イベントにはヤフーのエンジニアが30名以上参加し、地方ならではのさまざまなアイデアが発表されるなど盛り上がりを見せた。
「実は随分前からハッカソンをやりたいと思っていました。今回、石巻でハッカソンをやろうと思い立って、ヤフーの知人に相談したところ、全面的に動いてくださって、30名以上のエンジニアが来れますよと。ヤフーが参加してくれたことで、イベントは予想以上に盛り上がりました」(古山氏)
石巻2.0は、「石巻川開き祭り」までの12日間(7月21日~8月1日)にわたり、さまざまな実験的なイベントを行う「STAND UP WEEK 2012」を開催。「ゆかたde街コン」「日替わり復興バー」など、ユニークなイベントが連日開かれたが、石巻ハッカソンもその一環として開催されたそうだ。
古山氏は今後、石巻をはじめとする地方が抱える問題をITで解決していきたいと話す。「ITというのは“何でも屋”かなと思っています。メインではないかもしれないけれど、1つのビジネスに対して必ずどこかで必要になる。だからこそ、石巻で今後どんどん生まれてくるビジネスを自分たちがサポートしていかなければいけないと思っています」(古山氏)
現在は、津波で流されてしまった家屋や風景を、写真や動画を通じて紹介する石巻観光アプリを開発しており、近日中にiPhone/Androidアプリをリリースする予定。また、大学生や子供を持つ母親向けにアプリ開発教室やワークショップも開いていきたいという。
「やはり地域にITを根付かせるには、親の知識もなければいけないと思っています。子供がアプリを開発をしたいから『お母さんMac買ってよ』と言っても、親が必要だと思わなければ現実には難しい。だからこそ、まずは親に理解してもらわないといけないんです」(古山氏)
古山氏は、ITを通じてより多くの人を石巻2.0の活動に巻き込んでいくことがイトナブ石巻の使命だと話す。「石巻をIT産業の街にして、いつかはヤフーやグーグルの本社が建つようなビックシティにしたいですね。志の高いデザイナーやエンジニアの皆さんと、ぜひ石巻で一緒に活動していきたいです」(古山氏)
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